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E-M1markIIレビュー(3) サーキットでAF性能テスト(フォーサーズレンズの場合)

2017年2月3日

※こちらの記事はE-M1markIIのファームウェアVer.1.0でのテスト結果を紹介しています。2018年2月28日公開のファームウェアVer.2.0以降のAF性能については以下のページで紹介しています。

 


オリンパスE-M1 MarkIIのサーキット流し撮りレビューの続編です。

前回は、サードパーティ製マイクロフォーサーズレンズを装着した場合のAF性能テストとして精度と追従性を中心に確認しました。

 

今回も純正マイクロフォーサーズレンズなんて着けずに(笑)、旧フォーサーズレンズを装着してのレビューとなります。

初代E-M1で復活した旧フォーサーズレンズ群ですが、E-M1 MarkIIでは、どれほどの進化となっているでしょうか?

テスト方法と機材について

前回と同じタイミングで持ち込んでテストを行っているので、基本的な条件は同じです。確認しておきましょう。

テストの方法

ロケーションと撮影モード

ツインリンクもてぎのスポーツ走行枠を走るマシンをS字2個目出口付近に向かってコーナーアウト側スタンドから流し撮りしました。

ポイントは、マシンがS字1個目から2個目を抜けていく加減速に対するAFの動体追従性能となります。

前回同様、2個目を立ち上がってくるマシンを単写で撮影すること、2個目のアプローチから立ち上がりまでを連写で撮影することの2つのテストを行いました。

撮影画像の確認

こちらも前回と同じく、画像は以下の条件でRAW現像して評価しました。

現像条件
下記以外のその他の編集パラメータは設定していません。
Olympus Viewer3(バージョン:2.1.0)
アートフィルター:なし
露出補正:0EV
ホワイトバランス:オート
仕上がり:Natural
ハイライト&シャドウコントロール:OFF
階調:標準
コントラスト:0
シャープネス:0
彩度:0
収差補正:色収差R/C、B/Yともに0
ノイズフィルタ:標準
偽色抑制:自動、孤立点除去0
カラー設定:sRGB

機材について

本体とその設定

E-M1 MarkII本体は流し撮りに必要な設定(シャッタースピード優先モード、シャッタースピード、AFモード、AFフレームサイズ)を適宜選択しています。

使用レンズ

今回は、私がモータースポーツ撮影においてメインで使用しているレンズです。×1.4のテレコンバータと合わせて使用しました。

オリンパス ZuikoDigital ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD + EC-14

フォーサーズレンズでの評価はネットでも少しずつレビューが出てきていますね。

一眼レフ時代のフラッグシップ機E-5に装着したときほどではないものの、初代E-M1からは性能向上が実感できるようです。

フォーサーズレンズの中でもAF速度を追求したSWD(超音波モーター採用)モデルですが、E-M1 MarkIIでどれだけオリジナルフォーサーズ機種(E-3,5)に近づけるか?

テスト結果

撮影した結果をご覧いただく前に…

今回掲載している画像は、特に記載しないかぎり等倍画像あるいはそれに近いサイズの画像(最大14MB/枚)にリンクしています。

スマホなどの通信速度や容量に制限があるモバイル環境などでは、画像の閲覧に著しく支障があるかと思われます。固定回線などの速度と容量に余裕のある環境での閲覧をおすすめします。

S-AFでのAF性能をチェック

さっそく、S-AFでのテスト結果からみていきましょう。

283mm, F5.0, 1/250s, ISO400, S-AF

この写真だけモードダイヤルを間違えてプログラムモードで撮影してしまいましたが、シャッタースピード優先モードで流し撮りをするのと同様のシャッタースピード1/250sで撮影できたので掲載しています。また、焦点距離283mmとは、望遠端200mmをEC-14で伸ばした時のEXIFの値です。
やっぱり、ZD50-200mmはいい写りしますね。EC-14も画質を損なわずに焦点距離をかせいでくれますから、とりあえず撮っただけでも、雰囲気のあるモータースポーツ写真に見えます。

283mm, F5.0, 1/250s, ISO400, S-AF

左フロントを等倍で切り出すとこんな感じ。
多少のブレには目をつぶっていただくとして、ピント精度はライトユニットの形状やシェルのマークで確認できるかと思います。そして、バンパーの角付近に、もてぎの空がホワイト/ブルー/グリーンの3色が特徴的なタイヤバリアとともに写りこんでいるのが見えます。
ブレてはいますが、この解像感がフォーサーズレンズの魅力でしょう。E-M1 MarkIIとなって2000万画素に突入しても、そのポテンシャルはまだまだ健在です。

S-AFについて

ミラーレス機にする前の一眼レフ機はE-3を使っていましたが、E-M1 MarkIIのフォーサーズレンズでのAFスピードは、一眼時代まで完全に戻ったとはいいきれず、たしかにタイムラグを感じるのは事実ですが、そもそもE-3のAFが爆速だったので、充分に速いAFです。
フォサーズレンズの場合は、すべてのモードで位相差AFを使用するので、コントラストAFにみられる、ピントが行ったりきたりしながらフォーカスする(ウォブリング)動作はもちろんありません。
<ピント精度も前回のマイクロフォーサーズとの差はなく、一発でピントが決まるスピードは中級一眼レフ相当といっていいでしょう。

C-AFの場合をチェック

283mm, F5.6, 1/500s, ISO1000, C-AF

シャッター優先にもどして、シャッタースピードは1/500sから落としていきます。
AFフレームは前回同様9点で、画面中央に合わせてS字2個目へのアプローチ開始からAFをスタートしています。
コーナー立ち上がり直後にシャッターを切っていますが、この程度のシャッタースピードなら立ち上がりの加速にも追従できていることがわかります。

283mm, F5.6, 1/500s, ISO1000, C-AF

同じく左フロントを等倍切り出してみると、エアダム上部のホイルハウスへ抜けるインテークのメッシュのハニカム形状が表現できていることがわかります。
ブレもあるのでしょうが、夕暮れ時にISO1000(ISO設定はデフォルトのISO-AUTO)となるとやっぱりノイジーに見えますね。とはいえ、いままでのフォーサーズセンサーでこんな高感度ISOはヒドくて使う気にもならなかったのに比べると相当よくなっています。1世代前のAPS-Cセンサー相当かな。

C-AF+TRの場合をチェック

今度はC-AF+TRで被写体追従を試してみます。思い切ってスローシャッターに。

283mm, F7.1, 1/60s, ISO200, C-AF

283mm, F7.1, 1/60s, ISO200, C-AF

先ほどと同じ手順で9点ターゲットでコーナーへのアプローチからAF開始。ただし、クリッピングポイントにつく直前まではカメラを振らずに画面左から右へ被写体追従させてから流し撮りを始めています。

シャッタースピード1/60sでもコーナリングの加速度変化に追従していて見事のひとことです。こんなにあっさり決まるなんて久しぶりです。
さらにスローシャッターのシャッタースピード1/13sにチャレンジ。

283mm, F16, 1/13s, ISO200, C-AF

283mm, F16, 1/13s, ISO200, C-AF

さすがにこれだけスローシャッターになると上級者でも被写体ブレは避けられないと思いますが、メッシュなんかをみているとしっかり追従してピントが合っていることがわかります。

調子にのって別のマシンでもチャレンジ。

283mm, F7.1, 1/60s, ISO200, C-AF

283mm, F7.1, 1/60s, ISO200, C-AF

マーチのカップカーをシャッタースピード1/60sで撮影。フロントの日産エンブレム付近を等倍で切り出しています。ブレでエンブレムはムリでも、やはりメッシュ部分でピントが確認できます。
先のシビックからの変化点は、斜めに構図を変えていること。斜めに構えた場合、被写体の画面上下方向の距離変化がでます。E-M1 MarkIIから全点クロスセンサーとなっていますが、これが上下方法の変化を上手く捉えているんじゃないでしょうか。

マーチもシャッタースピード1/13sまで落として撮影してみました。

283mm, F16, 1/13s, ISO200, C-AF

283mm, F16, 1/13s, ISO200, C-AF

ほぼ同じ構図でシャッタースピードだけ落としている形ですが、ピントは同じ程度の精度で追従できています。なぜかブレも同じ程度にヒドいですが。

最後に前回と同じように連射での被写体追従性のチェックです。タムロンではちゃんと撮れなかった1/125sで挑戦します。
最初に連射の最初と最後の一枚ずつをトリミングなしでご覧ください。

283mm, F5.6, 1/125s, ISO320, C-AF

283mm, F5.6, 1/125s, ISO320, C-AF

シャッタースピード優先で、連射Lモードでの撮影のため、F値、ISO感度は1コマずつ異なります。おおむねフロントにピントが合い続けているのがわかるかと思います。

次にマシンだけを1280x960でトリミングしたものを4x3枚並べたもので連射を確認しましょう。

283mm, 1/125s, C-AF

コーナーにアプローチする手前からマシンのフロント付近にラフに合わせてAFを開始したあとは、画面中央付近にマシンをとらえる単純な構図を保つようにレンズを振って流し撮りしています。

さすがに前回のタムロンのときのように全コマ合焦とはいかず、ピントが合っているショットには○をつけました。
○のつかなかったコマについてみると、減速・加速の変化が最も大きいと思われます。

もてぎのS字は130Rから下り坂でスピードにのったところでフルブレーキングで1個目に入り、そこがから2個目にかけては右にステアリングを切りながら短距離の間にもとの高さまで登るようなアンジュレーションがあります。カテゴリやマシンによっては2個目でブレーキを踏む場合も考えられますから、前半の2枚はそのような減速度の大きな変化に追従できなかったかもしれません。
同様に立ち上がり直後の2コマもクリッピングポイントを抜けた直後にフル加速するポイントですから、追従が難しいところなのは、一眼レフであっても同様です。

もっとも、いずれのコマもマシン付近の縁石をみるとピントが合っているので撮り手側の問題である可能性(マシンの動きを正確にトレースしてレンズを振れていない)は十分にあります。

というわけで、ある程度カメラ任せでテキトーに撮った結果は、50%程度の歩留まりでした。これは十分に実用的な性能ではないでしょうか?

C-AFについて

先ほどのS-AFと同様に、最初の合焦までの速度は先代E-M1と比較して明らかに体感できる改善です。また、その後の追従もしっかり粘ってくれるので十分実用的です。

純正フォーサーズレンズとC-AF+TRは、先代E-M1でも慣れればそれなりに使えるというものでしたが、E-M1 MarkIIとなってからは歩留まりの向上が期待できます。
上級者の中には一番精度が期待できるC-AFのターゲット1点に集中して撮影する方も多いですが、熟練するまではその1点に合わせて動きをトレースするのが難しく、構図などに注意を向ける余裕がなかったのが実際です。
その点、9点ないしは5点ターゲットを使って実用性が向上したC-AF+TRであれば、ある程度はラフにターゲットを合わせて構図に集中できるので、ほしい画に対する歩留まりはよくなるはずです。

まとめ

E-M1 MarkIIのAFについて

E-M1 MarkIIとフォーサーズレンズのAF

今回はE-M1 MarkIIと純正フォーサーズレンズの相性をAF性能の観点でテストしましたが、S-AF、C−AFともに先代E-M1を超える十分なスピードと精度を体感できました。

発表後から発売までの間オリンパスのお披露目イベントやショールームで鉄道模型相手に試した方は多いと思いますが、実際のフィールドとなると結果はよくない方向に裏切られがちです。これがサーキットで実際にマシンを撮ってみて実感できたという点でとても満足しています。今後さらに設定を詰めていけば確実に歩留まり向上が期待できると思います。

価格.comのクチコミには、ZuikoDigitalレンズ使用時のAFの追従性能について、M.Zuikoレンズほどは期待しないでほしいという開発者との話が投稿されていますが、物理的に大きさ(≒重量)の違うレンズを同じ速さで動かせという方がムリな話ですし、すでにPROレンズについてはフォーサーズレンズの画質を超えているといわれている状況では、いずれ(MarkIIIのときなのかMarkIVのときなのかはわかりませんが)フォーサーズレンズのサポートも終わるのでしょう。

ですがそれは究極にAFを突き詰めようとしたときの話であって、そういう話題がでるレベルまでミラーレスの性能向上が見えているという点では喜ばしい話です。そのときまではZD50-200mm、味わいつくしたいと思います。

E-M1 MarkIIとサードパーティ製マイクロフォーサーズレンズのAF

前回テストした結果からすれば、サードパーティ製のマイクロフォーサーズレンズはE-M1markIIでは使いこなせていないように見えます。

スローシャッターでC-AFを使用した場合は、レリーズ中のAF動作がうまくいっていないようです。これがレンズのファームウェアのせいか、あるいは、タムロンのレンズの限界かはちょっと不明ですが、比較的高速シャッターを切る場合や、S-AFなら特に問題はありません。シグマの一部レンズでは、C-AFが動作しないという不具合が発生しており、ひょっとしたら似た現象かもしれません。像面位相差AFをC-AFで使用するE-M1 MarkIIの特徴と関係があるかもしれません。

こうなると気になるのは、オリンパス純正のミドル/ローレンジのレンズ、たとえば望遠なら75−300mmあたりだとどんな挙動をしてれるのか、Proレンズでなければ十分なスピードと精度は期待できないのか、というところでしょう。あるいは、パナソニックが一連のマイクロフォーサーズ用レンズのリニューアルを発表しましたが、これらとの組み合わせも興味深いですね。100-300mmとか防塵防滴になっていますし。

E-M1 MarkII流し撮りレビューを終えて

まずは箱から出した状態でサーキットに持ち出してみましたが、いかがだったでしょうか。ファーストレビューとして振り返ってみると次のような感想を持ちました。

EVFがさらに優秀になった

一眼レフ歴が長い人がミラーレスに以降するのに最も戸惑うがファインダーの見え方です。E-M5から使ってきて慣れた身からすれば初代E-M1で十分な見え方のEVFだったのですが、フレームレートが60fpsから120fpsへと倍速になり、表示タイムラグは6/1000秒から5/1000秒まで速くなりました。

フレームレートの向上は倍になっているので、さすがに実際の撮影で体感できます。特に流し撮りでマシンの動きを追いかけているときにはタイムラグとあわせてぎこちなさを感じていましたが、これが完全に解消されていて、スローシャッターでの流し撮りの歩留まり向上が実感できます。

センサーサイズが小さいフォーサーズ系の一眼レフは、光学ファインダーが小さくなりがちでそもそも見えにくかったんですよね。なのでEVF化は必然であったと思うのですが、弱点であるタイムラグが解消されて使わない理由はなくなりました。

AFは完全にレースで実用レベル

EVFが見えやすくなることでマシンの動きをトレースすることが楽になると同時に、動体AF性能が上がったことで、流し撮りの歩留まり向上がとても期待できます。

メディアではAF性能の比較対象としてCanon 7D MarkIIやNikon D500などのAPS-Cサイズセンサーの上級機が挙がることもありますが、そういったこと自体がずっとフォーサーズフォーマットを使ってきた身からするとすでにセンセーショナルだと思います。もちろん、これら比較対象が得意とするのはスポーツ撮影であり、サーキットで最も多くみかけるカメラたちですから、E-M1 MarkIIがモータースポーツ撮影/レース写真撮影でも「使える」カメラであるといえます。

連射がキモチいい

今回、タムロンのレンズ、フォーサーズレンズで連射も試しましたが、これだけ(18コマ/秒)連射できると爽快です。もちろん、先代E-M1でも十分な連射はできましたが、連射後のメモリアクセスのためにプレビュー等の操作ができず半分フリーズ状態でした。E-M1 MarkIIになってからは、バッファメモリ容量のアップが効いて解決しています。

E-M1 MarkIIになってよりプロ機っぽい仕様・性能となってきたということです。


 

E-M1 MarkIIが相当期待できるカメラだとわかってきました。まずは春先のS耐久開幕戦がターゲットですが、それまでにいろいろ試してイケてるセッティングを見つけたいと思います。

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