前回はオリンパスのテレコンバータMC-20を使って、4輪のイベントで焦点距離600mm(35mm換算1200mm)の画角を使っていろいろ撮影してみました。ツインリンクもてぎのような、比較的コンパクトなサーキットを走行する4輪には、600mmは少々窮屈だったかもしれません。
今回は、2輪撮影での使い勝手をチェックし、そこからマイクロフォーサーズを使う場合における、モータースポーツ撮影に最適なレンズ焦点距離について考えてみたいと思います。
Topics
機材とロケーション、撮影条件
機材はE-M1X+サンヨン
前回と同じく、E-M1XとM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROにMC-20を着けて、600mmF.8相当となります(35mm換算焦点距離1200mm)。
撮影条件
撮影条件も前回と同様。今回はウェットコンディションの撮影もあるため、高感度も多用しています。
ファームウェア:Ver.1.2
撮影モード:シャッタースピード優先、連写L(10fps)
露出補正:0EV
ISO:L64〜400
AFモード:C-AF+TR(被写体認識AF:モータースポーツ)
AFターゲットモード:オールターゲット
AF追従感度:0
C-AF中央スタート:有効
手ブレ補正:IS-AUTO、または、OFF
LVブースト:On1
EVFフレームレート:高速
もてぎロードレース選手権第2戦を撮影
もてぎロードレース選手権は、前々回のE-M1Xのレビューでも撮影したもてぎの地方選手権レースです。新型コロナ禍の影響で、7月下旬になってようやく第2戦というはこびになりました。
7月下旬とはいえ、今年は梅雨が長引いて当日も曇り模様。
もてぎでバイク撮影ならちょうどいいかも
SP-1クラスのGSX-R1000。S字立ち上がりを観戦エリアの最前列から撮影しています。トリミングはせずにこの画角でバイクが撮影できています。
サンヨンにMC-2では、絞り2段分なのでF8が絞り開放となります。シャッタースピード1/320sでもこれだけ寄ると背景が流れて動感が得られますね。
もう一枚は、ドゥカティ899パニガーレ。さらに撮影ポイントに近くひきつけてからの撮影です。
ツナギの太腿付近の革の質感、フロントフォーク、ブレンボのブレーキキャリパーなど、MC-20を挟んでもディテールはサンヨンのものと変わらず、十分な画質が得られていると思います。
場所をS字の内周側に変えて、S字2個目をまわるST1000インターのアプリリアRSV4RFをスローシャッターで。
画角にこれくらいの大きさで被写体が入る程度であれば、E-M1Xの被写体認識AFの反応がいいです。やはり、4輪のように画角一杯に被写体が入ると被写体認識は遅れるようです。
さらに小さい機種では今まで撮れない構図が楽しめる
NSF250Rで開催されるJ-GP3クラス。600mmだとS字の一部がここまで大きく写せます。250ccくらいのサイズになると複数のマシンを配置した構図も選べます。
スローシャッターにもチャレンジ。E-M1XとサンヨンのレスポンスのいいAFが、スローシャッターの確率をあげてくれています。バイクというか、この大きさに被写体が収まっている範囲では、MC-20によってAFが遅いと感じることはないです。
もちろん防塵防滴
同じくJ-GP3から。ウエットコンディションになったヘアピンでの撮影。
一番遅いコーナーなのでシャッタースピード1/60sは少々中途半端な条件ですが、路面の濡れた感じやカウルの雨滴がコンディションを表現できていると思います。もちろんMC-20は防塵防滴なので、同じく防塵防滴のE-M1Xとサンヨンの組み合わせなら、雨対策は不要。
もう少しシャッタースピードを上げれば、細いNSF250Rのタイヤからも捲き上る雨水の様子が撮れています。
ちなみに、このヘアピンでの2枚はこの位置(観戦エリア最上段)からの撮影。最前列にフルサイズかAPS-Cの超望遠レンズを構えるカメラマンの姿も見えますが、彼らよりはるか後ろから彼らよりも近く撮影できるわけです。
大規模なイベントになれば、ソーシャルディスタンスの確保も難しくなる可能性を考えると、マイクロフォーサーズのメリットを最大限に活かした、新しいアドバンテージかもしれません。
撮影ポイントを工夫して新しい画を狙う
S字の出口側から、一番離れたS字1個目を撮影。前回レポートしたように、遠景を撮影する場合は路面温度が高いと空気の揺らぎを受けてディテールは期待できないですが、曇りや雨の路面温度が低い場合は邪魔がなく、きっちりディテールが出ています。もちろん、マスターレンズであるサンヨンの画質から気づくような劣化は確認できません。
1St.アンダーブリッジから出てくるマシン達を真正面から捉えるために観戦エリアを外れたフェンスの外から撮影。トリミングしたものを現像時にアップスケーリングしています(OLYMPUS WORKSPACEの現像時に解像度を指定できる)。
E-M1系のセンサーではISO400でも暗所ではどうしてもノイジーになってしまいますが、ディテールはそれほど損なわずに済んでいます。
本来はこちらのような画角。フェンス越しの撮影ですが、サンヨンでは影響は確認できません。
雨が上がって晴れてきたところで、ダウンヒルストレートの土手の上から、白く輝く路面のV字を撮影。被写体は逆光ではあるものの黒く潰れすぎることなく、ディテールもしっかり残っています。
90°コーナーのターンインする後ろ姿をZ席の最前列から。離れていく被写体へのAFのレスポンスもMC-20で悪くなるようなことはありません。これはマスターレンズ次第ということになるかと思います。
モータースポーツ撮影に最適な焦点距離を考える
2回に渡ってテレコンバーターMC-20を使用した焦点距離600mmの画角の使い方を探ってみました。
MC-20としての評価は前回にも書いたように、マスターレンズの画質(解像度)を損ねることなく、焦点距離を2倍にできる便利アイテムであることにかわりありません。防塵防滴も実際のウエットコンディションで確認することができました。
そこで、国内主要サーキットでのモータースポーツ撮影を行うためのレンズ焦点距離について考えてみます。
富士スピードウェイや鈴鹿サーキットなどの場合
国際的なレースが行える大規模なサーキットである、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットは、高い安全性を確保するためにコースと観戦エリアがどうしても離れがちです。そのため、マイクロフォーサーズの150〜200mm(35mm換算300〜400mm)では大きくは1台のマシンを写すことは難しく、300mmでもちょっと物足りない。400mm以上は欲しくなると思います。その点でM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROにMC-14(420mm)やMC-20(600mm)などは、画質も含めて満足できる選択になると思います。
ツインリンクもてぎやスポーツランドSUGOなどの場合
そこより小さな規模のサーキット、ツインリンクもてぎ、スポーツランドSUGOは、200mmでも十分楽しめるポイントが多いですが、400mm前後まであると構図のバリエーションが楽しめます。モータースポーツ撮影のためだけに特別なレンズを用意しなくても楽しめるという点で、初心者向きといえます。
岡山国際サーキットや、オートポリスなどもツインリンクもてぎ相当の規模ですから、200〜400mmが欲しくなると思います。
サーキットや被写体サイズに合わせてオプションとしてテレコンを選ぶ
ということで、ほとんどのサーキットではマイクロフォーサーズで400mm程度があれば十分なことが言えると思います。これを基準に、広いサーキットでのアップ(もてぎ→鈴鹿)や、バイクなどの小さいマシンを撮影する(4輪→2輪)場合に、プラス100〜200mmする感じかなと思います(。
例えば、
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3:望遠端200mmだと、デジタルテレコン(または現像時のアップスケーリング)で400mmが狙えます。現像時にトリミングを考えて、フレーミングよりも被写体ブレを極力おさえるように、被写体への追従が大事になります。
- M.ZUIKO DIGITTAL ED 40-150mm F2.8 PRO:MC-14を使って望遠端210mmとしてデジタルテレコンも併用すれば420mm。MC-20であれば300mmF4.0相当として使用するか、物足りないシチュエーションでデジタルテレコンを併用することで対応できそうです。
- M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II:12−200mmと同じく、デジタルテレコンの利用で600mm以下で使用。
- M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO:MC-14を使って420mm。さらに寄せたい場合には、MC-20やデジタルテレコンのみで600mm、MC-14+デジタルテレコンで820mm、MC-20+デジタルテレコンで1200mm
オリンパスのズームレンズに関しては、最長焦点距離では及ばないものの画角の自由度が高いので、雨などのレンズ交換が難しいときにはメリットになりそうです。一方で、唯一の単焦点超望遠レンズであるサンヨンは、テレコンの使いこなしで複数の選択肢がありながらも高画質が維持できる点がメリットですね。
そして、これらに加えて、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS、さらにはM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25× IS PROが登場し、モータースポーツ撮影には選択肢豊富で使いやすいシステムとなってきました。
次回からはM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISについてレポートしたいと思います。