今回は、オリンパスのx2テレコンバーターMC-20についてお伝えします。
マイクロフォーサーズ規格のカメラにおける、一番の特徴が、コンパクトに超望遠システムを構成できることですが、その焦点距離をさらに2倍にしてくれるテレコンバーター。
サーキットに持ち込んで、その特徴を生かすためのコツについて考えてみます。
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テレコンバーターと使用できるマイクロフォーサーズレンズ
オリンパスのマイクロフォーサーズ用レンズ、M.ZUIKO DIGITALシリーズには、マスターレンズの画角を1.4倍にできるMC-14と2倍にできるMC-20があります。
いずれも、凸形状をしているために使用できるマスターレンズが限られます。現時点で使用できるレンズは以下のとおり。
- M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
- M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5-6.3 IS
マスターレンズの明るさを1段または2段分暗くしてしまう特性上、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROが一番相性が良さそうです。実際、MC-20発売直後は300mmF4.0になるのでM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROとの比較がたくさんされていました。
機材とロケーション、撮影条件
サンヨンとの相性をさぐる
今回は、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROにMC-20を着けて、600mmF.8相当となります(35mm換算焦点距離1200mm)。まぁ、使えるレンズがこれしかなかったんですが。
今まで、MC-14を使って420mmF5.6相当として使ってきた限りは画質の劣化などはなく、1段暗くなった程度ではAFなども特に問題はありませんでしたが、2段暗くなるとさてどうなるか。
これをE-M1Xに着けて撮影しました。
撮影条件
今回撮影した条件は次のとおり
ファームウェア:Ver.1.1
撮影モード:シャッタースピード優先、連写L(10fps)
露出補正:0EV
ISO:L64〜400
AFモード:C-AF+TR(被写体認識AF:モータースポーツ)
AFターゲットモード:オールターゲット
AF追従感度:0
C-AF中央スタート:有効
手ブレ補正:IS-AUTO、または、OFF
LVブースト:On1
EVFフレームレート:高速
舞台はアイドラーズ12時間耐久レース
アイドラーズクラブという、ヨーロッパ車ユーザーとショップを中心に構成されている自動車クラブが、年間数回行っているレースのうち、2020年はツインリンクもてぎで12時間の耐久レースが行われました。
今回はもてぎの観戦ポイントをいくつか移動しながら、走行の様子を撮影してきました。
画角2倍で構図の幅が広がる
今までよりも寄れる/離れた場所から同じ構図がとれる
例年、夏のもてぎは8月のSuperFormulaがビックレースで、その前の7月末〜お盆にかけて観戦エリアの除草/草刈りが行われるのですが、このイベントの開催は7月19日。
まだ草ボーボーの中だったので、あまり雑草の生えていないところから撮影です。本来撮りたい場所と比べるとコースから離れてしまいますが…
130Rを抜けてS字に入るところをアウト側の土手の上から撮影。908ポルシェのルーフを切ってロールケージを張り、オープン1シーターにしたマシンが走ってる!ガルフカラーもカッコイイ!
せいぜい800mm程度の画角だと、背景に130Rが見えるので撮影した場所が一瞥でわかりますが、ここまで寄れるのでGPSのデータがないとどこで撮っているかちょっと判別しにくいくらいの画角になっています。
先ほどのS字のポルシェとほぼ同じ構図ですが、こちらはスーパースピードウェイ(オーバルコース)の観戦席上から、4コーナーを立ち上がるビートを撮影した1枚。
普通は、オーバルの観戦席(専用駐車エリア)は最終コーナーから4コーナーまでを見渡せるので観戦にはいいところですが、撮影には遠すぎる場所です。それが600mmの画角ならこのとおり。
ルーフ上からエンジンルームに這わした蛇腹のダクトが耐久レースっぽいですね。これがポルシェと一緒に走っているのが面白い。
今度はS字を反対側にまわって、S字出口からV字までを見渡せるところを、やはり上からS字出口側を見下ろすようにポジションとって撮影。こちらも雑草の影響で、多くのカメラマンが撮影する観戦エリアの最前線からは5m以上離れています。
ちなみに、焦点距離300mmではこんな感じに撮れます。軽のN-ONEということもありますが、画角に対して余裕のあるレイアウトがとれます。
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それを600mmで撮影するとここまで寄れます。マシン全体が画角におさまらないので、フロントライトからボンネットの曲面に注意がいくようにスローシャッターで撮っています。
マシンはトミーカイラZZをレース用にチューニングされたマシン。トミーカイラをサーキットで見るのは初めてでした。
亀甲を模したトミーカイラのエンブレム、耐久レースらしいボディ前部の細かい汚れ、ヘッドライトの細部など、流し撮りがバチっと決まった部分のディテールを見ると、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROの解像感がテレコンで損なわれてはいないことがわかると思います。
先ほどと同じ場所から、今度はクラッシックミニ。マッチョな感じのオーバーフェンダー、灯火類へのテーピング、冷却風取込のダクト、そしてマットなカラーリングと、カフェレーサー然としてこれもカッコいい。
コースに近い低速コーナーは構図とAFに注意
次に場所を変えてヘアピンへ。もてぎでマシンに最も寄れるヘアピンでは全くより過ぎてしまうので、ドアップ狙います。
焦点距離300〜400mm程度だとこんな感じです。構図にもよりますが、マシン前面が画面におさまります。
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シトロエン2CVのレース仕様!こんな珍しいマシンが見れるとは。
被写体認識AFですが、先のポルシェ908と同様にハコ車だけどルーフが空いている/ルーフがないマシンの場合、ハコ車としてフロントグリルを認識してフォーカスしていく確率と、フォーミュラとしてヘルメットを認識してフォーカスする確率がフィフティ・フィフティでした。まぁ、普段のレースでまずみない車ばかりだし、仕方ないですね(笑)。
600mmでは、コンパクトな2CVですらここまでアップになるので、全ては画角に収まりません。マシンのどこを切ってどこを入れるか、構図をさらに注意する必要が出てきました。
若い人は日産ザウルスジュニアというワンメイクマシンを知らない人も多いでしょう(その名のとおり、ザウルスというマシンもある)。かくいう私もカメラを持ってからは初めて見ました。
このマシンでは、被写体認識はヘルメットを認識しましたが、画角にマシン全体が入らないためにAFがスタートがちょっと遅れました。それにつられてレンズの振りも失敗。これは撮ってみるまではわかりませんでした。
これもとても珍しい、ダラーラ・ストラダーレ。
こちらに関しては、車体はすぐ認識、グリル(に相当する部分)には認識に若干遅れがでました。さらにC-AF+TRで撮影していますが、コーナー旋回中のAF追従に遅れが発生しました。追従感度を0から+2まで上げても、最後まで追いきれないままでした。
こちらの911GTになると、完全にAFが遅れてしまいました。SSが速いので手ぶれ/被写体ブレではなく、アウトフォーカスです。
画角いっぱいに被写体が入った場合に被写体認識に鈍さが出るだけじゃなく、テレコンを使うことによってAFの追従自体が遅くなっている可能性が考えられます。
真夏の炎天下では、大気のゆらぎに注意が必要
今度はヘアピンからダウンヒルストレート脇を下って90度コーナーアウト側、ダウンヒルストレートを正面に見る場所へ。
100から200mm程度の焦点距離だと、下の写真のようにストレートの路面をメインに画角の奥にマシンを配置する構図くらししか撮りようがなかったりしますが…
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600mmまでくると、ここまで寄れる(もてぎのシグナルブリッジの大きさに注目)。
このイベントにはCARGUY Racingもゲスト参戦していて、2018シーズンのSuperGTに参戦したNSX GT3を久しぶりにみることができました。
さらに、デジタルテレコンで1200mm相当まで伸ばすとここまで寄れます。
当日は、レース開始時は梅雨の曇り空、午後から晴れてきて急に路面温度があがり、路面上の空気の揺らぎ(陽炎)が激しくなりました。超望遠での撮影ではどうしても空気の揺らぎが撮像に影響します。
これがE-M1Xの被写体認識にも影響します。陽炎によって被写体像が歪み、被写体認識がちょっと遅れることが何度かありました。
このウラカンGT3もCARGUY Racingのマシン。ビートやミニ、2CVみたいなコンパクトなマシンからウラカンやポルシェ、NSXみたいなGTマシンまでが同じコースを一斉に走るという貴重なイベントですね。
画質劣化の心配なし、使いどころをよく考えて
テレコンバーターMC-20を使って、焦点距離600mm(35mm換算1200mm)の画角で撮れる構図をさぐっていきました。画質に関しては先に開発されたMC-14と大差なく、つまりはマスターレンズの画質を損ねることはなさそうです。
一方で、MC-20で得られる極端な超望遠域を使いこなすのは、いくつか慣れが必要です。
- ツインリンクもてぎのような比較的コンパクトなサーキットで、4輪の撮影はかなり寄りすぎるので構図に工夫は必要
- E-M1Xの被写体認識を使用する場合は、寄りすぎることによって被写体認識しにくくなることがある場合がある
- マスターレンズのみ、あるいは、MC-14を使用している時に比べて、AFに若干の遅れを感じる(M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO使用時)ので、C-AFとの使い分けを検討する必要がある
- 今までは諦めていた遠い被写体にも挑戦できるだけの画質(解像感)の維持は可能だが、被写体との間にある空気の揺らぎは無視できないので、路面温度や湿度の変化には注意が必要
ほとんどの注意点は、組み合わせるカメラとレンズ、被写体との相性によると言えるものです。そういった点では、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットのようなコースまでの距離がある場所では使いやすくなる可能性があります。
引き続きモータースポーツ撮影での、MC-20の利用シーンを調べていきます。