OLYMPUS E-M1X サーキットレビュー(2) 流し撮りでのオリンパス手ぶれ補正の使い方

  公開日/最終更新日 2020/08/12

前回はE-M1Xのファースト・インプレッションとして、キーテクノロジーであるAI被写体認識AFについて、比較的難しいバイクレースを舞台に紹介しました。

ライダーのヘルメットという、ピントの合否が判断しやすいこともあり、具体的なサンプル写真で紹介できたと思います。記事を書くにあたって、普段はすぐに消していたピンボケ・手ブレの失敗作もたくさん残して帰ってきたので、今回は、それらを分析して見えてきた結果を紹介します。

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流し撮りの成否とは

流し撮りは、シャッタースピードを操作して被写体の動きをブレとして表現する撮影手法です(いまさらですが)。

基本的には被写体が画面の定位置で「止まり」、それ以外の景色が「流れる」ことで成立しますので、止まっている部分のピントがはっきりしていること、ブレがないことが求められます。

サーキットで流し撮りを撮った写真は、この原則に沿って、以下のように分類できます。

A.ピンボケ・ブレのない狙い通りの写真

f/9.5 1/250sec ISO-64 420mm M.ZD300mmF3.0+MC-14

被写体やその特徴点(バイクやフォーミュラーカーだとライダー/ドライバーのヘルメット、ハコ車だとフロントグリルなど、写真作品として一般的に注目する箇所)を中心にピントが合っていて、ブレがない写真、ブレの軸(芯)が他の箇所に比べて明瞭な写真。動いている被写体なので、背景は被写体の移動方向に対して一律に流れている。

B.ブレはあるが、ピントが確認できる写真

f/13 1/125sec ISO-64 300mm

被写体の進行方向に対するフレーミングの追従遅れや手ぶれによって、被写体や画面全体にブレが残り、作品性を損ねている写真。

被写体やその特徴点にピントが合っていることが、ブレの間からでも確認できる場合は、カメラのAF機能自体は正確に動作していたことが評価できる写真。

C.ブレが大きく、ピントも確認できない写真

f/19 1/60sec ISO-64 420mm

被写体の進行方向に対するフレーミングの追従遅れや手ぶれ著しいことで、被写体や画面全体に大きなブレが残っており、そのために、被写体やその特徴点にピントが合っているかどうかも確認できない写真。

この場合の問題はブレであり、原因の多くは撮影者の不手際である場合が多いため、カメラの性能について直接的に評価する対象から外すべき写真。

D.その他の写真(手ぶれ補正誤動作)

f/13 1/125sec ISO-64 300mm M.ZD300mmF4.0

撮影技術あるはカメラ性能と撮影結果が直接的な因果関係にないために、上記B、Cには分類できず、作品性を損ねている写真。

今回の場合は、手ぶれ補正機能の誤動作により、流し撮り操作をしたにも関わらず、画面中で止まって写るべき被写体がぶれ、流れて写るべき背景が止まるような写真。

E-M1XのAF成功率

約500枚の撮影データを分類すると…

前回紹介したサンプル写真は、あくまで一部で、全体としては当日4時間程度で撮影した約500枚。もちろん、レンズを変えながら、いろいろな設定である程度まとまった枚数(各条件20〜80枚)を撮った結果です。

これを上に書いた基準で、すべてのレンズ、設定で撮影した結果を分類すると、次のようになります。

「私の撮影技術」では、1発OKとなる確率(よく言われる「歩留まり」)は、20%です。まぁ、要するに「私の流し撮りはブレブレです」といってるわけです(汗)。

特にライダーのヘルメットにはっきりと成否がでるバイクの場合はシビアですね(ハコ車はもう少し楽で30%くらい)。みなさんも一度はマジメに自分のとった写真でデータを作って現実に向き合ってみませんか(苦笑)。

高性能AFが欲しい本当の理由

私の下手さ披露はこの程度にして、カメラの話について。

このデータで注目したいのは、AFがちゃんと仕事したことを確認できたA+B、つまり60%以上はピントがあっていたこと。

マイクロフォーサーズはフルサイズ機に比べてそもそも被写界深度が深いこと、流し撮りはシャッタースピードが遅く設定するために絞り気味でやはり被写界深度が深いこと、この両方の点から、実際にはピンボケはさほど怖くありません。

では、なぜAF性能を気にしているか、被写体認識AFをありがたがっているかというと、被写体のどこにAFするかはカメラに任せて、撮影者は被写体の動きにあわせてレンズを振ること、構図を整えることに集中できるからです。

ピンボケはさほど怖くないといっても、何も意識せずにシャッターを切ればピンボケは起こるわけで、AFターゲットが被写体の注目点/特徴点付近にあることは最低限必要です(なので、まずオールターゲットモードを使うことがありません)。

C-AFで動くものを撮影するためには、最初にターゲット枠を被写体の適切な位置に合わせ、AF中もターゲット枠を大外ししない程度に意識し続ける必要があります。

AFターゲットの位置≒被写体の特徴点なので、AFターゲットを意識しながらレンズを振ればいいかというとそうではなく、AFターゲットの1点だけを意識すると、被写体が画面中のどこに向かって、どれくらいの加速で動いていくかを把握するのが難しくなり、結果はブレが残ってしまいます。

なので、C-AF+TRの性能(被写体追従性)が良ければ、最初のターゲット合わせだけ集中すればいい、被写体認識AFに至っては、それすらお任せして、お目当の被写体の画面内の配置と動きに集中した方が、ブレの少ない写真を撮りやすいことになります。

E-M1XのAF合格率はおよそ70%

以上をふまえて、冒頭のデータから「ブレの影響を無視した本来のAFの効果」がわかるデータを抽出してみましょう。

冒頭のデータのうち、ピントが合っていることが確認できたもの(冒頭のA+B)をシャッター速度別、レンズ別に分類して、それぞれの分類した総数からAFの合格率として計算したのが上のグラフです。

シャッター速度が(流し撮りとしては)十分に速い、1/250s、1/125sは、私の撮影技術の範囲では比較的ブレの少ない範囲なので、ブレの影響を取り除いたデータと見ることができます(フォーサーズZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDの1/60s条件は撮影していませんでした)。

若干の誤差はあるもののAF合格率はほぼ70%で、「シャッター切ったら高確率でピントがあってる」というレベルだと考えられます。

この特徴はレンズの種類(PROレンズ、スタンダードレンズ、フォーサーズレンズ)を問わず同等で、E-M1Xの場合、オリンパスの比較的AFが速いとされるレンズであれば、どれも同じAF性能を使えるということになります。

フォーサーズレンズとマイクロフォーサーズレンズでAFの合格率は同じという結果ですが、C-AFにおいて、最初に被写体を捉えるまでの時間は、フォーサーズレンズの方がワンテンポ遅れます(被写体を捉えて追従している状態では差はありません)。
これは、E-M1 Mark IIから同じ傾向で(E-M1Xで若干改善されています)、違うということを知っていれば対応できる程度の差です。

ちなみに、シャッタースピード1/60s、モータースポーツ撮影としてはそこそこスローシャッターの部類に入っていると思っていますが、バイクをちゃんと撮ろうとするとなかなか難しいものですね(言い訳)。

流し撮りでのオリンパス手ぶれ補正のクセ

手ぶれ補正はONにすべきか、OFFにすべきか

流し撮りで、レンズを振る角度が浅いと手ぶれと誤検知して、背景を止めて被写体を流してしまう補正をしてしまうことを前回も書きました。

超望遠レンズを使うとき、手ぶれ補正があるとファインダー像が安定してフレーミングが楽になるのですが、被写体の移動量に反してレンズを振る角度はそれほど大きくない場合が多く、手ぶれ補正の誤動作を招きがちです。

それでは、手ぶれ補正はONにすべきかOFFにすべきか?答えを探してデータを整理してみました。

 

今度は、歩留まり(流し撮りの成功率=冒頭のAの割合)に着目し、手ぶれ補正(IS-AUTO)ON /OFF別、レンズ別に分類したのが上のグラフです。また、手ぶれ補正をONで撮影した時に誤作動で被写体が流れてしまった率を赤字で書き込みました。

手ブレ補正OFFの場合→歩留まり30%:一脚使用と相性がいい

グラフをみると、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROとフォーサーズ ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDを一脚で使用した場合は、手ぶれ補正がOFFの方が歩留まり30%程度でした。

逆に、手持ちだったM.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3では、手ぶれ補正OFFでは7%しか成功しませんでした。

このことから、一脚使用時は、手ぶれ補正OFFの方が良いという結果が導き出されます。

手ぶれ補正ONの場合→歩留まり20%:誤作動リスクはあれど、手持ちとの相性がいい

一方、手ぶれ補正をONにしたM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3ではともに歩留まり14%となっています。

どちらのレンズも、手ぶれ補正の誤作動が発生していますが、仮に誤作動がないとして誤作動発生数を歩留まりに取り込むと約20%とみなすことができます。

これは、誤作動が発生しなかったフォーサーズ ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDの歩留まり22%と同程度であることがわかります。

手ぶれ補正の誤動作については、S字コーナーを通過する際に左→右→左とマシンの動きに合わせてレンズを振る動作も左右に細かく切り返すシーンで発生していますが、15〜20枚程度撮影すると1枚は誤動作が出てしまう、という頻度でした。

これは多いか少ないか、というのはありますが、避けるべきシーンが明確なので、リスクは大きくはないと考えます。

ちなみに、今回M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3の手持ちでの歩留まりが他に比べて悪いですが、原因として、E-M1Xとの重量バランスの悪さを考えています。

レンズが短く軽いためボディ側に重心が寄って扱いやすいはずですが、伸ばしたズームの先端がどうしても小刻みに上下してしまい、手ぶれでBやCに分類されるものが多かったです。

手ぶれなくバッチリ決まった場合は特に問題なく、これは慣れの部分もあると思いますので、今回はここまでの言及とします。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3, IS-AUTO f/9.5 1/250sec ISO-64 200mm

一脚だと手ぶれ補正が誤動作している?

なぜ、一脚を使用している時に手ぶれ補正をONにすると歩留まりが悪くなるのでしょう?

原因を考えるにあたって、オリンパス自体は、手ぶれ補正の使い方をどのように考えているでしょうか?E-M1 Mark IIが発売された際にデジカメWatchでオリンパス技術者がインタビューを受けている記事があります。

この中でインタビュアーの伊達氏とオリンパス技術者田中氏が三脚使用時の手ぶれ補正について語っています。

伊達:三脚のときは、手ぶれ補正をOFFにしたほうがよいのでしょうか。三脚を使っていても地面とか望遠レンズの鏡筒が揺れますよね。

田中:基本的にはONのままでも大丈夫です。三脚に載せられたかどうかは、カメラの中で判断して適切な制御に切り替えています。三脚特有の細かい揺れに対して極端に弱いという訳でもないのですが、重いレンズをつけたときなど、三脚とカメラのバランスによってはこれらが正常に動作しない場合があります。すべての条件で、手ぶれ補正ONの状態で問題なく動くとは保証できないので、三脚使用時は手ぶれ補正OFFを推奨しています。

出典:デジカメWatch『伊達淳一が徹底解剖!「OM-D E-M1 Mark II」の先進性』

手ぶれの検出は、カメラ軍艦部内のGセンサーが手ぶれによる振動の周期や振幅を測定することで行なっていると考えられます。

例えば、どんなにしっかり構えたつもりでも、撮影者の呼吸や心拍に由来する一定の周期で、関節や筋肉の可動範囲に相当する一定の振幅で揺れているので、それを検出すれば、カメラが手持ちなのがわかります。

逆に、三脚に載っている場合は身体由来の振動が検出されないので、手持ちではないと判断できるでしょうから、その場合には、補正動作を行わなければよいわけです。

ところが、カメラのバランスによっては三脚に載っている時とも異なる振動が検出される可能性があり、特に通常検出しないような細かい振動などを元に誤った補正動作が行われる場合がある、と理解できます。

一脚を使用した時はさらに複雑、不安定な振動となることが予想できます。しかも流し撮りのような、手ぶれとは異なる振幅の振動をセンサーに与えれば、通常とは異なる補正動作があっても不思議ではありません。

オリンパスの手ぶれ補正機能とのつきあい方

手ぶれ補正の誤動作についてまとめると、次の2種類があることが考えられます。

  • 特に超望遠レンズIS-AUTOを使用した場合に、レンズの振り(角速度)が足りないことで流し撮りを検知できずに誤った補正を行う止まるべき被写体が流れ、流れるべき背景が止まる
  • 一脚を使用した流し撮りでIS-AUTOを使用した場合に、手持ちや三脚固定とは異なる振動を検出することによって誤った補正を行う流し撮りでのレンズを振り方によらず、細かいブレが残る

もちろん、「一脚をうまく扱えないためにレンズをしっかり振ることができず、1と2を併発」ということも十分にありえるわけです(私の場合、流し撮りの調子が極端に悪い場合はほぼコレ)。

では、このことを元に解決策を考えてみましょう。

解決策1. 手持ちならIS-AUTO、一脚使うならISはOFF

f/16 1/125sec ISO-64 420mm M.ZD300mmF3.0+MC-14

マイクロフォーサーズであれば、超望遠でも手持ちでこなせるだけのサイズ・重量なので、手持ちでIS-AUTOが一番でしょう。ただし、焦点距離が伸びれば伸びるほど、画面内の被写体の動きほどレンズの振り角はないので、レリーズ前後もしっかりレンズを振ることは意識しましょう。

一方で、耐久レースや複数の走行セッションを連続で撮影する場合、体力的に一脚に頼りたくなるのも事実です。オリンパスの強力な手ぶれ補正能力からすれば一番消極的な解決策ですが、一脚を使うときはISはOFFにし、手ぶれの予防は一脚の剛性に頼りましょう。

解決策2. 流し撮り方向が決まっている場合はS-IS2/S-IS3を使う

f/8 1/250sec ISO-64 420mm M.ZD300mmF3.0+MC-14

IS-AUTOは、レンズの振りを全角度から検出し、流し撮りの方向に対して垂直な方向のぶれのみを補正します。

カメラの構えに対して水平方向にまっすぐに流す場合、あるいは、垂直方向にまっすぐに流す場合は、検出の必要がないわけですから、IS-AUTOを使用せずに、S-IS2(水平に流す場合)/S-IS3(垂直に流す、または、縦構図で水平に流す場合)を使用すれば誤動作を回避できます。

「カメラの構えに対して」と書いたのは、カメラを斜めに構えた場合も、そこから水平に流す場合はS-IS2が有効だからです。

一脚を使用した場合でも、IS-AUTOに比べて1方向分は補正がキャンセルされることになるため、誤動作のリスクを減らすことが期待できます。

解決策3. 手ぶれ補正能力を超えるシャッタースピードで使用する

いちいちシーンを考慮してISのON/OFFやモードを選んだり、一脚を付け外しするのは面倒くさい、という場合の奥の手として、スローシャッターで補正能力を超える方法が考えられます。

例えば、E-M1XM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14を使用する場合、補正効果は5段分

オリンパスのMC-20の紹介資料より抜粋

一般に手ぶれが生じるシャッタースピードの目安が、1/(焦点距離)sと言われるので、1/840s(実焦点距離420mmにおいて35mm換算で計算、実際のカメラとしては1/1000s)より遅いと手ぶれが生じるとすると、そこから5段分遅くした1/30s以上遅ければ補正の限界を超えて誤動作の影響が小さくなると考えられます。

1/30sよりもスローシャッターであれば、スペック的には補正能力を超えたところでの撮影なのですが、具体的には補正能力を超えたところで手ぶれ補正ユニットとしてはどのような動作をしているのかは明らかではありません。

f/22 1/30sec ISO-64 420mm M.ZD300mmF3.0+MC-14

実写では、1/30sでは誤作動とみられる不自然なブレはみられませんでした(もちろんスローシャッターとして許容できるぶれの芯があることが前提で、スローシャッターの方が歩留まりが良いということではありません)。

以前から、E-M1 Mark IIよりも前の機種でも、IS-AUTOにおいて1/40s〜1/60sよりスローシャッターだと背景が止まるような誤動作は起こらないことを経験的に理解していたのですが、今回、E-M1Xの結果から、あてになる方法だと考えられます。

優れたAFを信じ、手ぶれ補正のクセを理解して、流し撮りを決めよう

E-M1Xの撮影データ約500枚分を分析し、AFの性能を定量的に評価するとともに、業界トップレベルの性能であるオリンパスの手ぶれ補正が、流し撮りにおいては多少クセがあることがわかりました。

メーカーを問わず、手ぶれ補正機能のついたカメラとレンズで流し撮りをする人にとって、「流し撮り時は手ぶれ補正をONにすべきかOFFにすべきか」、しばしば議論になります。

しかし、その答えはメーカーの受け売りだったり、感覚的、経験的に示されることが多いので、このように定量的な説明は他にはあまりないのでは、と自負しています。

とはいっても、普段の撮影で少し条件違いを加えたり、失敗した写真も消さずに残しておくだけで、誰でもできることです。

同じオリンパスユーザーであっても、撮影条件やレンズの振り方でその挙動は個人差がでることもありますので、もし、E-M1系、E-M5系で同じ苦労や疑問を持っている方は参考にしていただき、違うと感じる方はぜひマネしてみてください。

 

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