撮影記 機材

レッドブルエアレースを撮影するためのカメラ設定と機材(RedBull AirRace Chiba 2016)

2016年6月14日

RedBull AirRace Chiba 2016

RedBull AirRace Chiba 撮影記その3。今回はレンズとカメラの設定について紹介します。会場の幕張海浜公園は機体が飛んでいる海上までの距離はどこのエリアも大体おなじなので、前回紹介した観戦エリア意外のエリアでもおなじ機材、設定で対応できます。時速370kmの世界をミラーレスで撮るためのレンズとカメラ設定とは?

これまでに使った機材について

Redbull Air Raceの撮影は今年で2度目。昨年はOLYMPUSのミラーレス一眼(マイクロフォーサーズ)E-M5にTAMRONのマイクロフォーサーズ用レンズ 14-150mm f3.5-5.8 Di III C001を組み合わせてチャレンジしました。今年はOLYMPUS E-M1に同じくOLYMPUSの一眼レフ(フォーサーズ)用レンズZuiko Digital 50-200mm f2.8-3.5 SWDを使用しました。組み合わせの変更は、おもに焦点距離をかせぐことを重視しています。

長いレンズが必要

レンズに関しては、なるべく焦点距離が長い望遠レンズがいいです。エアレースの場合、観戦エリアのある岸壁から200~300m程度離れた海上を飛行する機体を狙うので、焦点距離の大きい望遠レンズを選ぶことになります。テレコンバータなどがある場合はそれも使用した方がいいでしょう。

2015年、Cエリア後方から。150mmでもこれがせいいっぱい。

2015年、Cエリア後方から。150mmでもこれがせいいっぱい。

例えば、上の写真は2015年の初開催時、OLYMPUS E-M5にTAMRON 14-150mm f3.5-5.8 Di III C001を持ち込んでテレ端150mmで撮影したものです。会場に到着後、とりあえず撮影したものなので波打ち際まで50m程度はありました。これでは焦点距離は全く足りないですね。この焦点距離の場合だと、砂浜で総立ちしている観客を入れて会場の雰囲気を撮るような構図にはちょうどいいかもしれません。

2015年、Cエリア最前列から一番海側のエアゲートを望む(38mm)

2015年、Cエリア最前列から一番海側のエアゲートを望む(38mm)

こちらも同じく2015年で、運よく砂浜最前列でスペースを確保できたときのもの。38mmなので肉眼に近い見た目です。マイクロフォーサーズで150mmというと35mm版で換算すると300mm程度となり、機体が目の前を通過する場合では、機体のディテールが撮影できるようになります。

TAMRON 14-150mm f3.5-5.8 Di III C001ですが、OLYMPUSの純正レンズに比べると若干AFの遅さを感じることがあるものの、写り自体はシャープでヘンなクセもなくいいレンズです。高倍率ズームということでレース撮影以外にも使いやすく、家族で遊びに出かけるときなどに一番稼働率が高い便利ズームレンズです。お値段も安く、コストパフォーマンスに優れたおすすめレンズですね。

今年は、35mm版換算で400mmとか500mm以上の超望遠で撮影したいと思い、E-M1にZuiko Digital 50-200mm f2.8-3.5 SWDにテレコンバータEC-20を装着して35mm換算800mm相当まで伸ばして撮影しました。他の一眼レフだと「大砲」と呼ばれる大きさのレンズが必要になりますから、手持ちでは体力的に厳しい大きさで一脚や三脚が欲しくなるわけで、その場合はカメラ専用エリアに限定されてしまいます。マイクロフォーサーズのようなサイズのミラーレスカメラなら手持ち余裕ですから、エリアの制限は受けなくて済むわけです。

さらに、E-M5、E-M1ともに、デジタルテレコン機能で倍の焦点距離で撮影することもできますから、活用するのもよい手かと思います。

AFと関連設定がキモだった

撮影設定で重要なのはやはりAF。今回の撮影ではS-AF、C-AF、C-AF+TR(追尾)を試しました。

S-AFでは、測距点をシングルターゲットで選びました。最初に機体を捕捉するまでが遅かったので、狙った構図に機体が入ってくるかなり前からこまめにシャッター半押しでピント合わせして遅さをカバーしてみましたが、さすがに世界最速を掲げるだけあって追いかけきれません。グループターゲットでは少し捕捉が楽になりますが、狙ったポイントにフォーカスできるかは難しいところ。

RedBull AirRace Chiba 2016

400mm, F10, 1/400s

これはキャノピーにバッチリピントが合った好例。こまめにフォーカス動作を入れるためにちょっと後追いの構図になります。

C-AFでも同様で、最初の捕捉が遅いうえにフレーミングが追いつかずの測距点を外してしまうとはるか彼方にフォーカスが飛んでいってしまう(ZD50-200mm f2.8-3.5はフォーカスリミッターがない)のでS-AFよりもかえって難しかったです。

RedBull AirRace Chiba 2016

400mm, F18, 1/250s

この写真の測距点は実は尾翼よりも後ろ。カメラを振り遅れてしまって測距点がズレてしまったところを、フォーカスが飛んでしまわないうちに無理やりレリーズして撮ったものです。

そんな中、C-AF+TRが有効でした。最初の捕捉が遅いのは同様でしたが、そのあとはしっかり追尾してくれるのでフレーミングが追いつかなくてもファインダーのどこかで捕らえさえすればなんとかフォーカスし続けてくれました。サーキットでは、フェンスなどの構造物や複数マシンがファインダーにはいるために追尾する測距点があちこちに飛びがちで使いにくいのですが、大空をバックにした飛行機を撮るには効果的でした。これを応用し、デジタルテレコンで機体をアップにして測距点をオールターゲットで使えば迫力のある絵が撮れます。

RedBull AirRace Chiba 2016

400mm, F14, 1/250s

この写真はC-AF+TRで撮影。位相差AFであっても曇天の背景とコントラストが明瞭な被写体の方が追従しやすいようです。

ちなみに、いずれのモードでもフォーカス優先ではなくシャッター優先で、フォーカスロックオンは弱設定としました。

最初の捕捉が遅いのは、E-M1の像面位相差AFとフォーサーズレンズの組み合わせの限界によると思われます。コントラストAFと併用するM.ZD300mm f.4だとまた違った結果になるでしょう。

ところで、これらの測距方式に劣らないピント精度がいい方法があるのですがそれは…

RedBull AirRace Chiba 2015

150mm, F13, 1/320s

MF置きピン!(汗)
エアレースってゲートを正確に通過することが重要なので、ある程度絞り込んでエアゲートにピントを合わせておくと、おのずと機体にもピントが合ってくるようです。なのであとはファインダーに機体を捕らえることに集中すればいいという。

いずれにしても、時速370kmともいわれるエアレースの機体をファインダーに捕らえ続ける流し撮りの技術が足りないことをあらためて痛感した次第です(汗)。

その他の設定は?

十分な望遠と精度の高いAF設定があれば、あとは腕しだい、なのですが、他の設定についてもメモ程度にご紹介します。

エアレースの機体はレシプロエンジンのプロペラ機なので、シャッタースピードを速くしすぎるとプロペラの回転が止まって写るのであまりカッコよくありませんよね。私の場合は、1/600sから徐々に遅くしていって、手ブレと相談しながら、最終的には1/400s程度としました。おそらく1/125sくらいまで遅くすればプロペラの回転跡がキレイに円を描くと思われますが、手ブレ・被写体ブレ(この場合はカメラの振り遅れによる)が出て失敗しました。

手ブレ補正等のその他の設定はAUTOです。画質に関してはAUTOで撮りましたが、西向きの海上ではどうしても逆光になるため、露出補正を+1以上はいじりました。白飛びするギリギリで撮影して、後でRAW現像で追い込むという手法をとりました。

まとめ

自動車レースと違って、エアレースとなると撮影の機会は非常に少なく、基本的には練習なしのぶっつけ本番になりますが、2015年、今年と回を重ねながらコツがつかめてきました。今年の室谷選手の活躍もあるので来年もおそらく日本開催はあると思います。今回紹介した設定を参考にしていただければ、機体のスピードに体が慣れさえすればミラーレスでも十分撮れるので、ミラーレスカメラを持っている方はぜひ来年チャレンジしてみてください。

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