空港での旅客機の撮影と違い、エアレース機に限っていえば撮影の機会は日本では幕張での最大3日間くらいなもので、それ以外は室屋選手が帰国時に福島で練習飛行するときくらいでしょうか。私のように航空機撮影はエアレースだけという方もいるしょう。
少ない機会をものにするためには機材の準備は確実にしておきたいですね。レッドブルエアレース撮影のために準備したこと、使用したE-M1markIIの設定について紹介します。
カメラとレンズについて
今年はどのイベントも全てE-M1markIIとZuiko Digital 50-200mm f2.8-3.5 SWDを使用しており、今年のエアレースもこの組み合わせでした。2015年はE-M5、2016年はE-M1(初代)と、毎年オリンパスのミラーレスカメラを使用してきました。エアレースに関しては、一眼レフカメラじゃないと撮れないということはなく、ミラーレスカメラでも十分撮影できます。
昨年のエアレースでの準備とカメラの設定についての記事もあわせてご覧ください。
E-M1markIIの設定は後で紹介するとして先にレンズについて。
今私が使っているZuiko Digital 50-200mm f2.8-3.5 SWDでは35mm換算で400mm、これにテレコンバータEC-20を装着して35mm換算800mm相当まで伸ばして撮影しました。一般的な一眼レフカメラだと「大砲」と呼ばれる大きさのレンズですが、オリンパスのミラーレスカメラであれば、十分手持ち可能なサイズです。
その他の準備品
他に準備したものといっても、カメラまわりはわずかですが、私(E-M1MarkII)の場合としてごらんください。
バッテリーは2本以上はもちたい
ミラーレスカメラは一般的な一眼レフカメラよりもバッテリーが持たないといわれますが、1日に数百枚程度撮影するようなレースイベントだとバッテリー1本では心もとないです。私の好みの構図が縦構図なのでバッテリーグリップ(いわゆる縦グリ)を好んでつけますが、これによって常時2本を途切れなく使用できるようにしています。
実際にはさらに1本予備バッテリーを準備し、1本目のバッテリーを使い切るタイミングで予備バッテリーに交換して本体に入れているバッテリーをバックアップとして扱っています。
一脚は不要、カメラマンエリアなら三脚が役立つ
流し撮りでの手ブレのリスクを軽減するために一脚は役立つアイテムですが、エアレースについては砂浜に立ててスムーズにカメラを振るのは難しいでしょうし、上を向いての撮影を一脚で支えながら行うのも難しいでしょうから不要だと思います。
カメラマンエリアでは三脚の使用が認められていますが、一脚同様に撮影には使いにくいです。ただし、セッションの間の休憩時にカメラを下に降ろしておくのは砂がかかって心配という場合には役に立ちます。
PLフィルターの使用で失敗
青空の色合いや海面のギラギラした光の乱反射を調整するためにPL(偏光)フィルターがよく使用されます。純正やサードパーティ製などさまざまなものが販売されていますが、純正や国内メーカー製のC−PL(円偏光)フィルターをオススメします。実は家電量販店のワゴンセールで買った古いPLフィルターをつけていったのですが、位相差AFが誤作動してピンボケを量産してしまいました。
E-M1MarkIIのエアレースむけ設定
ここからは今回エアレース撮影で使用したE-M1MarkIIの設定を項目ごとに紹介します。紹介するのは、エアレースのために意図して設定した項目で、それ以外の項目は基本的にはデフォルト設定です。
A1.AF設定
- AF方式は、C−AF+TRです。超望遠ではファインダーの狙った構図に機体をとどめるのは難しく、C−AF追従設定、AFリミッターと合わせてしっかり追従するように設定しています。
- AEL/AFLモードではS1/C4/M1のmode4とし、AEL/AFLボタンにAF Startを割り当てて「親指AF」としています。機体がエアゲートを通過する瞬間やAF追従が外れた場合にAFを止めてフォーカスが大外れするのを防いでいます。
- AFスキャンはmode1で、ピントが外れた時のスキャン動作をしないようにしています。スキャン動作によるロスを避けています。
- C-AF追従感度は最も敏感な+2設定にしています。単調な青空の背景に1機だけが飛んでいるのでAFが迷う要素がなく「ねばる」必要がないためとにかく俊敏に追いかけるようにしています。
- AFリミッターは20〜580mで設定しています。自分の前にいる人たちを避けているのと、無限遠にピントが大外れしないように大体の撮影する範囲に合わせています。
A2.AF設定その2
- 顔優先は特に必要なく、自分の前にいる人にフォーカスしようとする可能性もあるのでOff。
A3.AF設定その3
※A3ページは特に設定変更していません。
B.ボタン/ダイヤル/レバー
ボタン機能サブメニュー
- ◎ボタン(録画ボタン)にはデジタルテレコンを割り当てています。もっと被写体によりたいときにすぐ呼び出せる位置に割り当てています。バッテリグリップのB−Fn1ボタンにも同様にデジタルテレコンを割り当てています。
Fnレバー設定サブメニュー
- Fnレバーにmode2を設定しています。レバーでC−AF(+TR)とS-AFを切り替えるようにしています。ピントよりも枚数優先で撮りたい場合に連写Hと合わせてS−AFでフォーカスして撮影する場合もありました。
C1.レリーズ/連写/手振れ補正
- 連写Lは10fps、連写Hは15fpsで設定しています。ただし、連写Lはほとんど速度めいいっぱいで連写していません。
C2.レリーズ/連写/手振れ補正 その2
- 手振れ補正はIS-AUTOです。流し撮りの自動検出は十分できていますので、デフォルトですがあえて紹介。
D1.表示/音/接続
※D1ページは特に設定変更していません。
D2.表示/音/接続 その2
- LVブーストはOn1を設定し、露出補正の結果反映なしでEVFの見やすさを優先しています。
- フレームレートは高速。ミラーレスの流し撮りでは一番優先して設定したい項目です。
- フリッカー低減もEVFの見やすさ優先でオートに設定。
D3.表示/音/接続 その3
- ガイド線表示、動きものは構図を追い込むのは難しいのでざっくり把握できる三分割線を使っています。ざっくりでもEVFに反映して常時確認できるようしています。
D4.表示/音/接続 その4
※D4ページは特に設定変更していません。
E1.露出/ISO/BLUB/測光
- ISOオート設定は、上限を1600、基準を200としています。エアレースは正午から夕方までの時間の変化と6月上旬の不安定な天気の変化があるので露出はこまめに変えるべきなのですが、ISOオートに任せて流し撮りに集中します。マイクロフォーサーズでは今のところはまだISO1600の画質までしか信用していません。
E2.露出/ISO/BLUB/測光 その2
※E2ページは特に設定変更していません。
E3.露出/ISO/BLUB/測光 その3
※ E3ページは特に設定変更していません。
F.フラッシュ
※Fページは特に設定変更していません。
G.画質/WB/色
- 画質設定では、LargeサイズにSuperFineを組み合わせ設定でJPEG画像を保存しています。基本はRAW撮影ですが、デジタルテレコンはJPEGしか反映されなかったり、さしあたっての色見などはJPEGを頼っているので。
- カラー設定はsRGBです。AdobeRGBの環境を持っていないので。
H1.記録/消去
- カードスロット設定、E-M1MarkIIからWスロットになりましたが、32GBのカードをそれぞれにいれておき、No.1→No.2の順に使い切ったら切り替えとしています。今回は結果としてRAW+JPEG記録で1000枚以上撮影しましたが、No.1を使い切ってNo.2で数十枚撮りました。
H2.記録/消去 その2
- 実行優先設定は中止優先としています。うっかり間違って消去してしまいそうになってもどこかボタンを押せばキャンセルできる余地を残しています。
I.EVF
- EVF自動切換はOffにしています。明るい屋外では背面液晶が見えにくい場合が多く、EVFで撮った画像の確認をするので手動で切換ボタンを押しています。
- EVF表示スタイルは3を使用しています。これがEVF全体を使えるので。
J1.その他
※J1ページは特に設定変更していません。
J2.その他 その2
- 電池設定では、バッテリーの使用順序をバッテリーグリップのバッテリーから順に使用するよう設定しています。前述していますが、本体のバッテリーを最後に使い、バッテリーグリップのバッテリーは途中で交換するフローです。途中交換はバッテリーグリップの方が簡単に交換できます。
撮影時設定
最終的な撮影時の設定はこんな感じです(スーパーコンパネの画面です)。
- ISO設定は晴れていればLOWですが、曇りだせばAUTOにしています。
- ホワイトバランスは屋外であれば天候に関わらず晴天モードとしています。オートホワイトバランスに比べて屋外の天候や時間による色味の変化が自然に反映されます(むりやりホワイトバランスを合わせにいかないのがいい)
- AFターゲットは9点グループターゲットにしています。精度とスピードでは1点や5点グループの方がよいのでしょうが、私の腕前ではうまく被写体をおさめられていません。
- シャッタースピード優先での撮影ですが、適宜Mモードで都合のよい露出を選んだりもします。
- シャッタースピードは1/400s〜1/640です。プロペラが止まることはないですが、きれいに円を描くまでは回らないので、手ぶれの心配がなければ1/320s以上にした方がいいと思います。ここは歩留まり/失敗率との兼ね合いです。
- 南西の空に向かって撮影するため逆光がほとんどです。+1.0露出補正していますが、RAW撮影であれば露出補正しなくても黒つぶれありませんでした。
いかがだったでしょうか。エアレースに特化した設定項目がいつかあったので、今回はすべて紹介してみました。設定に対する考え方も書きましたので、参考にしていただければ幸いです。
そういえば、オリンパスのオーナーズケアのユーザーにもE-M1markIIでエアレース機を撮影するための使いこなしのヒントが公式サイトで公開されました。今回紹介したものと少し設定に違いがあるので、こちらも参考にしてみてはいかがでしょうか。