GT夏の3戦も最後の鈴鹿1000kmレースで終わり、気がつけばもう9月ですが、7月のSUGOのおはなしです。
SUGOは3年前の合同テストに日帰りで出かけただけで、予選・決勝の2日間フルでの観戦は初めてでした。
初めてのサーキットでは下調べしてもすべての撮影ポイントを効率よく回るのは難しいものです。今回はあまり動かずに構図やシャッタースピードを変えながらバリエーションを増やすこと誰でも簡単に撮影できるスポット、構図ですので参考にしていただきたいと思います。
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今年のSUGOも悪天候
SUGOについて、立地などは前回紹介したとおり、宮城県の南部の山中に位置するヤマハ系のサーキットです。
私は家族3人で土曜日午後に現地入りし、予選、決勝を観戦しました。
この週末はとにかく荒れまくりで、土曜日は午前中は曇りながら30℃越えで蒸し暑く、予選までは小雨がチラホラ。予選後、夜半から日曜日午前中はときおり雨足が激しくなったり弱くなったりを繰り返しながら決勝前に一旦は止んだものの、レース中も小雨が各チームを混乱させました。
やってる当人たちが一番大変だったと思いますが、見てる側も大変でしたね。もっとも、写真を撮る側としてはドラマティックなシチュエーションにワクワクなのですが。
遠征仕様の使用機材
今回は遠征なので、不慮の機材トラブルを考慮したバックアップ体制を整えて挑みました。
メイン:Olympus OM-D E-M1markII + ZuikoDigital 50-200mm F2.8-3.5 SWD + Teleconverter EC-20
サブ:Olympus OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 / TAMRON 14-150mm F/3.5-5.8 Di III (Model C001)
メインとしてE-M1markIIとZD50-200mmの組み合わせに加えて、予備機として無印E-M1を用意し、mZD9-18mmとタムロンの14-150mmを持ち込みました。家族旅行の一環で来ているのもあり、設定をあまりいじらずスナップも撮れるシステムを予備機に持たせた格好です。
TAMRON 14-150mm F/3.5-5.8 Di III (Model C001)
タムロンの14-150mmは、本来は旅行などで使い勝手のいい高倍率ズーム(いわゆる便利ズーム)。
コース上を走行するマシンに寄りたい場合はテレ(望遠)側を、スタンドの観客も入れた雰囲気重視の構図にはワイド(広角)側を選ぶなど、コレ一本で撮影に幅が広がりますし、撮っていても飽きがこないです。高倍率ズームは画質が…、という方もいますが年々良くなっていますし、撮り方次第でカバー可能だと思います。
Olympus M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
一方のmZD9-18mmはオリンパス純正レンズの中では最も広角ですが、リーズナブルに超広角が楽しめます。安いだけに暗いレンズですが、画質的に実用的な範囲でISO感度を上げれば問題ないです。
レース写真的には、低感度でスローシャッターでの流し撮りがこのネガをカバーできる使い方でしょう。
テレコンバータについて
ZD50-200mにプラスするテレコンについては、EC-14と20の両方を持って行ったのですが、急な天候の変化を考慮してEC-20をつけっぱなしでした。
最初から望遠でマシンに寄ってもスピードに慣れないうちはフレーミングに苦労するわけですが、撮っているうちに慣れてきて望遠側が足りないように感じるようになってきます。雨中にテレコン交換するリスクを避けたいのでEC-20だけつけてました。画質で選べばEC-14の方がいいんですが。
このほか、E-M1markIIには縦グリHLD-9を装着して使用しました。無印E-M1は縦グリなしでカメラバックの取り出しやすい位置にキープして適宜取り出す感じです。
撮影ロケーション
今回は土曜日からの撮影です。朝9時30分ごろに栃木の自宅を出発して、お昼前にはSUGOに到着。家族一緒にグランドスタンドで観戦し、ついでに撮影といったところ。
蔵王で一泊して翌日曜日は家族にはグランドスタンドで観戦してもらってる間にSPコーナー入口側→馬の背出口→SPコーナー出口の順に動いて撮影しました。
今年のSUGOもマモノが活躍した荒れたレース展開で見ごたえがありましたね。残念ながらレース中盤48周目、3回目のSCランとなって優勝争いがDENSO SARDとSRoadの2台に絞られた頃、帰りの渋滞を避けるために後ろ髪引かれる思いでサーキットをあとにしました。もうちょっと時間が取れれば最終コーナー方面も行きたかったのですが。
GT500の写真で撮影のポイントを紹介
今回は場所の移動が少なかったものの、アングルや焦点距離を変えていろいろな構図で撮ってきました。GT500クラスの決勝前フリー走行から決勝レースの写真をご覧ください。
SPコーナー入口でのフォーメーションラップ。おなじみのパトカー先導ですが、SUGOが一番寄れるんじゃないでしょうか?
SPコーナースタンドは階段状になっていて、これを撮影した1個目入口に向かい合う位置では、段を上がればSPの1個目から2個目の飛び込みまで見渡せます。
下段最前列なら明るめのレンズで金網を(ボカして)消すことで、マシン正面を迫力ある構図で撮れるワケですが、ワンパターンな構図になりがち。しかも、そこから移動するときは他の観客の邪魔にならないよう気をつかうので私はあんまりスキじゃありません。
撮影したのは1番上段で当然マシンから離れてしまいますが、それでもSUGOは近いです。フォーサーズ/マイクロフォーサーズなら、比較的安く買える部類の150mm台の望遠レンズで十分。
こちらも1枚目と同じ位置から撮影。SP1個目を立ち上がるところですが、寄りかたが中途半端だったのとスピードについていけずにリアが上手く収められませんでした。少しトリミングしています。
これだけ寄れると、1/200sのシャッタースピードでも背景が流れ、タイヤの回転も写せるのでスピード感を出すことができます。
1枚目と同じ構図で1/200sのシャッタースピードでも、マシンがレーシングスピードなら十分流し撮りの表現になります。
NSXは減速しながら画面左→右のコーナリングで、この動きに合わせてレンズを振っています。後ろのGT-RとDENSO LC500は馬の背を抜けて加速してSPのアウト側むけて画面右→左、WAKO's LC500は画面左→右に加速しつつ馬の背を抜けています。
このようにメインの被写体と違う方向違う加減速をしているとスローシャッターじゃなくても大きくブレてくれるので流し撮りの効果が大きいですね。また、明るいレンズ(≠高いレンズ)じゃないと撮れないような被写界深度の浅い(ボケ味の大きな)写真と似た雰囲気が被写界深度が深いフォーサーズ/マイクロフォーサーズのレンズで得られるので、私はよく狙う画です。
ZD50-200mm+EC-20で1番望遠側にズームして撮るとここまで寄れます。E-M1IIのAF-C、1点フォーカスポイントを使ってホンダの赤バッチに狙いを定めてシャッターを切っています。手ブレせずにマシンの動きに合わせることができればAFはしっかりしているのが分かると思います。
RAWデータではFグリルのメッシュやブラックアウトしているエアダム周辺は黒つぶれせずに撮れていますが、コントラスト重視で黒つぶれ気味に現像しています。
このZENTはさっきの無限NSXと似た構図で少し寄ってます。こちらの方がシャッタースピードは遅いのですがスピード感はちょっと足りないくらいですよね。後続車の実際の動きに変化が小さいことと背景がアスファルトだけになっているので被写体以外のブレが小さいからだと思います。
au LC500の右横のアスファルトの凸凹(で雨水のはけ具合によってできた縞のように見える)模様を比べると、au LC500がボケているのではなくてブレているのが分かると思います(ボケ味なら凸凹模様もボケるはずなのにボケていない)。
この1枚は馬の背からSPスタンドに向かう道、マシンがSPにアプローチしているのを左手に見ながらSP1個目のイン側にレンズをむけて撮っています。
旋回するマシンを流し気味に撮ろうと1/125sに設定したものの、コーナリングスピードが思ったより低かったので流れていません。ホイールも写らないアングルなのでもっと高速シャッターで止めて撮ってもよかったかもしれません。
GT-Rのテールランプがカッコよくキマるので好きなアングルですしテクニック的にも楽なので(コーナーにピントを合わせて高速シャッターで連写すればよい)、初心者にもオススメの構図です。
2つ上のZENTとほぼ同じ条件で、横構図にトリミングしました。オープニングラップのホンダ同士の争いですね。ホンダファンなので久しぶり(何年ぶり?)のアガる展開でした(笑)
こういう状況だと私の場合、絶対撮りたい緊張でブレブレだったりすることが多いんですが(汗)、スタート直後でタイヤの温まりもイマイチしかもウエットでしたからSPの進入速度は低めだったので、カメラで追いやすかったかもしれません。
同じNSXで、ほぼ同じ位置にいながら、4台それぞれに違う動きでコーナーにアプローチしているのが、それぞれのブレの違いで分かると思います。
十分な台数のマシンがS字に連なって先頭のRAYBRIG NSXに流し撮りの芯が合った状態だと1/125sくらいが後続車の判別がつきつつもスピード感もあって上手く撮れたなと満足できる一枚。あとNSXが上位独占してたので満足してた瞬間です(笑)
これは馬の背を抜けてSPにアプローチするマシンを真横から撮影しています。この間には金網とガードレールだけで距離も10m程度の迫力あるポイントです。たぶん、ここまで寄れるのはSUGOだけだと思います。その分、マシンのエキゾーストノートも大きく聞こえるので、耳の健康に注意してあまり長居しないことをオススメします。
金網はスローシャッターで撮影することで消し(たように写し)ます。でも、肝心のマシンまで流れてはいけないので、自分がマシンを追うことができるシャッタースピードを撮影しながら探すことになります。雨で暗かったこともあり、撮れるシャッタースピードに対して絞りとISO感度を合わせこむようにいじってます。
上で紹介したGT-Rのテールと同じ位置で撮影しています。縁石を入れて高速シャッターで撮っているので路面の「雨」感とコーナリングの様子が切り取れたと思います。
撮り手にしか分からないこだわりとしては、LC500の左ウインドウにマモノが棲む森とどんよりと曇った空が写り込んでいるところでしょうか。
これはSP2個目に移っての撮影です。すでにSPスタンドは観客で一杯なので、撮影はスタンドの1番上段、通路からです。1個目を抜けて2個目につながる短い直線を向かってくるWedsSport LC500。
もっとスローシャッターで撮影している方もいますが私には上手くできず、1/100sが精一杯でした。E-M1IIのAF-Cは接近する被写体は苦手なようです(離れる被写体には強いようです)。
馬の背からSP1個目のアプローチ部分、上にあったNSXとGT-Rの写真と同じ位置から少しSP側に歩くと金網が入らない高さまで上がります。そこからマシンを追いかけるように撮影しました。
これも画になるGT-Rのテールですが、GT-RのバッチにAFを合わせて撮影です。1/500sですがここまで寄れば、背景はもちろん流れます。
SP2個目、スタンド上段から撮影です。
SP2個目からはスローシャッターに挑戦しています。インを伺うWedsに対して被せるKeeperのLC500同士の戦い。旋回中にレクサスのエンブレムにブレの芯を合わせるのも手ですが、ライトオンしているのとLCの「目元」が特徴的なので右ライトに芯を持ってきています。
こちらもSP2個目ですが、マシンのブレを抑えきれていません。これは正面を向いているのでホンダの赤バッチに合わせたいところ。
スローシャッターだと、ライトの光跡が流れるアスファルトに映えてこれはこれでキレイですね。
これは2個目を立ち上がるRAYBRIGを、スタンドにいる観客のポンチョ姿を前ボケ(ブレ)に使ってスローシャッターで撮影しました。
1/10sでボディサイドのRAYBRIGロゴ(の芯)が残っているので成功かなと思っています。E-M1IIの手ブレ補正になってから1/10s以下のスローシャッターにも挑戦することが増えました。
ちなみに、前ボケのポンチョは色味で分かるかもしれませんが、実はスバル(STI)のロゴが入ったもので、本当はBRZが通るときも狙っていたのですが失敗しています(汗)
次回はGT300の予定です
今回はGT500の写真を紹介しながら、それぞれの写真の撮影時に考えた構図のとりかたや撮影条件についても書いてみました。
今回はSPからほとんど動いていなかったので、どうしても似た構図になってしまいますが、シャッタースピードや切り取り方で結構かわるということがわかっていただけたと思います。
撮影した場所も特別なところではなく観戦だけでも楽しめる場所ですので、みなさんも試してみていただければと思います。