新しくカメラやレンズが発表される度に、「今使ってるカメラ/レンズよりもマシンをうまく撮れるんじゃ?」と思いながらカタログスペックやネットでの前評判を読み漁る人って多いんじゃないでしょうか?
マイクロフォーサーズ規格でモータスポーツ撮影という狭いカテゴリーであっても、それは同じです。
新製品のE-M1markⅢが登場した今回も、買い換える/買い換えないについてあれこれ調べては悩みました…。
いろいろと考えていくうちに、マイクロフォーサーズ規格でモータースポーツ撮影をするためにどのカメラを選べばいいか、同じように悩んでいる人にどんなアドバイスができるか、いくつか組み合わせを考えてみたのでシェアします。
新型コロナウィルスの影響でモータースポーツも写真撮影もままならないご時世ですが、あれこれ機材に妄想を膨らませて楽しんでみてはどうでしょう?
Topics
カメラ界における一般的なマイクロフォーサーズの位置づけ
まずは、カメラの規格について簡単におさらいしましょう。
一眼タイプのカメラを選ぶということは、
- メーカー/ブランド/グレードを選ぶ
- 撮像センサーのサイズ/レンズの規格を選ぶ
ということになります。
ほとんどの場合、(1)を選ぶと自動的に(2)が決まるかんじです。
例えば、(1)キヤノン/EOS/5DmarkⅣだと、2020年3月時点の最新モデルで、(2)フルサイズ一眼レフ/EFマウントとなります。
他には、(1)ソニー/α/7Ⅲだと、(2)フルサイズミラーレス/Eマウントというのもあります。
一眼レフ/ミラーレスは、どのようにピントを合わせるか(AF)、どのような写真が撮れそうか(ファインダー)に関わるしくみに注目してカメラを分類するときに使う言葉ですが、ほとんどの場合でセンサー/レンズの規格とセットなので、混ぜて書いています。
オリンパスの場合、(1)ブランド/グレードによらず、(2)4/3型センサーのミラーレス/マイクロフォーサーズマウントとなります。
4/3型センサーを持ち、マイクロフォーサーズマウントのレンズを使用するミラーレスカメラに関しては、それ以外の組み合わせがないこともあり、「マイクロフォーサーズ」と呼ぶだけで、センサーサイズもレンズの規格もミラーレスであることもまとめて意味します。
キヤノンやニコンのフルサイズ一眼レフを買う人は、長年ノウハウを積み重ねてきた動体に強いAFを求めている場合が多いですね 。実際、サーキットで1番よく見かけるのはこの2社。
最近では、ソニーのフルサイズミラーレスを、スマホよりも高画質で撮りたい新しいもの好きが購入するのをみかけます。
もう少しマニアックな、フィルムカメラユーザーなんかは、フジのフィルムの雰囲気を再現したAPS-Cミラーレスを持っていたり。
このように、目的/用途とカメラの特徴を比較して選ばれるメーカーやブランドがある一方で、コンパクトで扱いやすい性能と価格のマイクロフォーサーズは、「とりあえずレンズ交換式でキレイに撮れるカメラ」という、どちらかというと消極的な理由で選ばれる場合も多いですね。汎用性が高いカメラだともいえるでしょう。
オススメのマイクロフォーサーズを考える方針
そんな幅の広いユーザーが選ぶマイクロフォーサーズのカメラでモータースポーツを撮影しようという場合、
- それまでにどのようなカメラを使ってきたか
- どんなスタンスでモータースポーツを撮りたいか
という2つの軸で分類し、それぞれにマッチするカメラとレンズを考えてみたいと思います。
例えば、(a)いままでスマホしか持っていなかったから、ピットなどに停まってるマシンを撮ったりしてきたけど(b)試しに流し撮りに挑戦してみたい、という人と、(a)コンデジを極めて流し撮りもできるけど(b)安くてもっと望遠の効くカメラを使いたい、という人にはそれぞれオススメが違うはずです。
オススメマイクロフォーサーズカメラ&レンズ【初級〜中級】
【初級】初めて一眼カメラを買って、モータースポーツも撮影したい人むけ
スマホを使ってきた人がミラーレスカメラで流し撮りにも挑戦してみたいという場合、それまで撮影してきた感覚をスポイルしないよう、なるべく軽いカメラをオススメします。
また、それまで育ててきた構図のセンスを崩さずにスムーズに一眼タイプカメラに慣れるに、広範囲をカバーできるズームレンズがオススメです。
*走行するマシンを中心にはじめてみたい人には… E-M5 mark III*
E-M5 mark IIIは、上位機種と同じ撮像センサー・AFセンサーのため、走行するマシンにしっかりピントが合ってくれます。
本来、E-M5 mark IIIはオリンパスの中では中位機種ですが、非常に軽くて(カメラ本体で414g。iPhone11が194gなのでほぼ倍程度)扱いやすく、マイクロフォーサーズの良さを実感できるカメラです。
レンズキットで付属するM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 IIは、スマホで使い慣れた焦点距離と同等の広角域14mmから、コースを走行するマシンを大きく捉えることができる望遠150mmまでレンズ交換なしで対応できます。
*レース観戦や関連イベントを楽しみたい人には… E-M10 mark III*
E-M10 mark IIIは、オリンパスの電子ファインダー(EVF)付きのカメラとしては一番安い入門グレード。
オリンパスのOM-Dシリーズとしては一番軽くて(本体362g)コンパクトなモデルですから、イベント参加やショッピングのときにも邪魔になりにくいです。
ダブルズームキットに付属する望遠レンズM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 RはE-M10 mark IIIの軽さをスポイルすることなく、コースを走行するマシンを大きく写すことができるレンズで、マルチにレースを楽しみたい人にオススメです。
ただし、多くのスマホやコンパクトデジタルカメラで採用されているのと同じ原理でピントを合わせる(コントラストAFという)ので、曇天や夜ではピントが合いにくいことがあります。ほとんどのレースは昼間の明るいうちなのでデメリットは少ないでしょう。
コントラストAFが頼りにならない場合は、あらかじめマシンが通過するであろう部分(近くの縁石など)にMFでピントを合わせておいて撮る方法(置きピン)もあります。
上の写真は、初代E-M5(E-M10 mark IIIと同じくコントラストAF機)ですが、置きピンで撮ったものです。
サーキットを走行するマシンは正確にライン上を走行してくれる場合が多いので、MFでもあまり心配ないとも言えます。
また、E-M5 mark III、E-M10 mark IIIのどちらのカメラにも、被写体や撮影シーンに合わせた適切な設定で撮影できる「シーンモード」機能を持っていますが、このシーンモードの中に「流し撮り」モードがあります。
はじめての流し撮りで慣れないうちは、画面(ファインダー)にマシンを収めるだけで精一杯になる場合もあります。
そんなときでも「流し撮り」モードで撮影すれば、背景がキレイに流れた流し撮り写真を撮影することできます。
もちろん、スマホアプリでみられるような合成写真ではなく、背景を流す方向以外のブレをセンサーがキャンセルして撮影する手法なので本物の流し撮りです。
*プラスアルファを楽しむには… *
どちらのカメラもキット付属のレンズであれば、焦点距離150mmの望遠撮影ができますが、さらに望遠で撮りたくなることもあるでしょう。その場合は次の3本を候補に。
200mmまで届く便利な高倍率ズームレンズ
現在レンズ交換式カメラ用のレンズとしては一番高倍率なズームレンズです。
望遠側が200mmあればさまざまな構図で撮影を楽しむことができます。
広角側が12mmなので、ボディとレンズを別々に揃えるか、キットレンズを売って安く抑えるなどコスパ的にも有効です。
実際に撮影した写真はこちらの記事をご覧ください。
レンズ交換式カメラの楽しみはいろいろなレンズを付け替えることにありますが、モータースポーツ撮影の場合、ウエットレースでは交換もままなりませんから、高倍率なズームレンズは雨天で有利となります。
上述した、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 IIとあわせ、2本とも防塵防滴レンズなので、雨天でも安心して使えます。
コンパクトでも300mmの超望遠レンズ
いずれも望遠側300mmの超望遠ズームレンズ。広角側からサーキットでの使い勝手がいい焦点距離で、普段使う標準レンズにプラスして使うイメージです。
超望遠レンズながら非常にコンパクトで、マイクロフォーサーズのコンパクトなボディに合わせて身軽な運用ができます。
どちらもII型になってAFがさらに速くなった点もモータースポーツ撮影に有利ですね。
写真はE-M5に以前販売されていたI型を使用して撮影したものです(今は所有していないので過去のものを蔵出し)。
E-M5はコントラストAFのみで、発売後も大幅なファームウェアバージョンアップは行われず、動き物の撮影に関しては、決して高性能なAFというわけではありません。
それでも、LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6のフォーカス動作が高速なおかげで、ピントで苦労するということはありません。
また、焦点距離300mmとしては非常にコンパクトで軽く、E-M5 mark IIIやE-M10 mark IIIなどのコンパクトなボディにも似合いますね。
このコンパクトで軽い組み合わせでは、流し撮りに必要なマシンの動きに合わせたレンズの振りが楽にできるので、流し撮りも決めやすいです。
LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 II POWER O.I.S. に関しては防塵防滴になった点も注目でしょう。
パナソニックのレンズでは、この兄弟的なポジションでLUMIX G VARIO 45-200mm F4.0-5.6 II POWER O.I.S.というのもあります。
【中級】エントリーからのステップアップや、一眼レフユーザーのサブシステム向け
先ほどの【初級】で一眼タイプのカメラの扱いに慣れた方の中で、もっと画質にこだわった撮影をしてみたいという場合には、レンズのアップグレードを軸としたカメラ選びをオススメします。
フルサイズ一眼レフをメインカメラに据えていて、望遠撮影に特化したサブシステムを検討されている方も同じカテゴリとなります。
*望遠レンズを使った流し撮りに慣れてきたステップアッパーには… PROレンズをプラス*
さきほど【初級】で紹介したE-M5 mark IIIは、本来は中級グレードのカメラなのでオススメに変動なしです。
E-M5 markIIIと150mm以上の望遠レンズの組み合わせに慣れると、SuperGT GT300クラスやスーパーフォーミュラのマシンをシャッター速度1/250s~1/125sで被写体ブレなく撮影できるようになると思います。
そうなると、それより速いシャッター速度で撮っても解像感の違いが感じられず、レンズの画質が気になってくるはずです。
そこで、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮ってみれば、それまでよりシャープに撮れるはずです。
レンズの画質が向上するだけでなく、AFの速度も改善されるので、撮れやすさを感じることができるはずです。
多くのオリンパスユーザーが、ジャンルを問わず動く被写体の撮影で使っている望遠レンズでしょう。
高級なPROグレードのレンズとしては比較的コストパフォーマンスがいいのもポイントです。E-M5 mark IIIを持っているのであれば、E-M1系にアップグレードするよりも、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROに投資すべきです。
このレンズによって、カメラ本体と合わせて重量が増しますので、この重さを振り回してもブレないように練習するのが、次のステップアップポイントでしょうか。
*望遠特化サブシステムとしてのマイクロフォーサーズ構成*
または、
レンズは、
すでに他ブランドのAPS-Cサイズ、または、フルサイズの一眼レフを持っている方でも、コンパクトな超望遠の環境と、深い被写界深度からくる望遠域での撮りやすさを求めてサブシステムを検討されている方もいるかもしれません。
そういった方には、それほどコストをかけずに十分な望遠域と、そこそこのパフォーマンスが期待できるE-M5 mark IIIか、E-M1 mark IIのボディに、40−150mm F2.8 PROを2倍テレコンとセットで使ってみてはどうでしょうか。
これで35mmフィルム換算で最大600mmの焦点距離を得られます。これで国内のサーキットでほとんどの観戦エリアをカバーするどころか、今まで撮れなかった画角での構図も楽しめるはず。
E-M1 mark IIは、mark III発売開始された今だと店頭在庫か中古となりますが、mark II発売時に開始された延長保証サービス「オリンパスオーナーズケアプラス(以下、O.O.C)」を受けた個体に関しては、シャッターユニットが交換された個体もありますので良品が期待できます。
【番外】マイクロフォーサーズでコスパを追求するエコノミー・ジャンキー向け
または、
レンズは、
とにかく安くモータースポーツ撮影のシステムを構築したいと考えている方にこそ、中途半端な一眼レフ+望遠レンズよりもフォーサーズの資産を活用した上記の組み合わせをオススメします。
E-M1 mark IIIの発売で、店頭在庫のmark IIが値下がりしつづけています。中古市場にも良品が多く流れ込んできますので、程度のよいE-M1 mark IIをメインボディに考えるのがいいでしょう。
さらに安くあげるためには、初代E-M1が十分安くなっています。
E-M1系であれば、像面位相差AFを搭載しているので、モータースポーツ撮影に必要なAF速度が得られます。
また、フォーサーズレンズとは連写を多用する場合には相性がいい点も初代E-M1をオススメする理由です。
レンズは、ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDが一番オススメとなります。
画質はフォーサーズ時代から定評がありますし、超音波AFモーターを搭載しているSWDモデルなら、E-M1系のAFにもレスポンスよく動いてくれるので、モータースポーツ撮影も十分こなせます。
これに関しては拙ブログ内でいくつも作例がありますのでご覧ください。
フォーサーズ時代であれば10万円程度したレンズが、現在では3万円台から購入可能です(テレコンと同等か、場合によってはテレコンの方が高値で取引されている場合も)。
E-M1系ボデイとZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD、およびテレコンは防塵防滴に対応しているため、ウエットレースでも安心して撮影できるのがメリットです。
なお、マイクロフォーサーズボディでフォーサーズレンズを使用するためには、防塵防滴に対応した純正マウントアダプターをあわせて手に入れましょう。
その2に続きます…