もう2月になろうかというタイミングですが、あけましておめでとうございます。2017年も43RacePhotosをよろしくお願いします。
ほぼ1か月越しのE-M1 MarkIIのレビュー記事再開となります。
E-M1 MarkIIの目玉ともいうべき動体撮影性能の進化、AFの性能について、私のメインフィールドであるサーキットでテストを行いました。
Topics
テスト方法と機材について
テストの考え方
43RacePhotosでは、ミラーレスカメラでモータースポーツ撮影、特に流し撮りを行う場合に次の3項目がハードルになっていると以前にお伝えしました。
- 高速で移動する被写体と向き合うための見やすい(遅延の少ない)ファインダー
- 被写体の撮りたい部分に撮りたいタイミングでフォーカスする正確なAF
- 超望遠域をカバーするリーズナブルで豊富なレンズ群
E-M1 MarkIIについても、この3項目からすでにカメラ雑誌等で高評価されているAF性能を軸にモータースポーツ撮影での使いやすさをテストしました。
テストの方法
ロケーションと撮影モード
オフシーズンのツインリンクもてぎに行ってきました。そこでスポーツ走行枠を走るマシンをS字2個目出口付近に向かってコーナーアウト側スタンドから撮影しました。
ここは、S字1個目から2個目出口にかけて画面奥から手前、左から右そしてまた左へと被写体が移動するため被写体までの距離が常に変わるロケーションとなります。
また、S字1個目から2個目にかけて比較的小さな加減速をし、2個立ち上がりからはフル加速しますから、被写体の加速度の変化も含めたAFの動体追従性能の評価に向いています。
このようなシチュエーションで、2個目を立ち上がってくるマシンを単写で撮影すること、2個目のアプローチから立ち上がりまでを連写で撮影することの2つのテストを行いました。
撮影画像の確認
撮影した写真について、今回はOlympusViewer3でRAW現像をしたTIFFおよびJPEG画像で確認しました。現像パラメータは特にいじらず、ほぼ素の状態で確認しています。
現像条件
Olympus Viewer3(バージョン:2.1.0)
アートフィルター:なし
露出補正:0EV
ホワイトバランス:オート
仕上がり:Natural
ハイライト&シャドウコントロール:OFF
階調:標準
コントラスト:0
シャープネス:0
彩度:0
収差補正:色収差R/C、B/Yともに0
ノイズフィルタ:標準
偽色抑制:自動、孤立点除去0
カラー設定:sRGB
機材について
本体とその設定
E-M1 MarkII自体は本体のみでバッテリーグリップ等のオプションは付けていません。
設定は、箱から出して電源を入れた状態から、撮影データをRAWで保存する設定と、流し撮りに必要な設定(シャッタースピード優先モード、シャッタースピード、AFモード、AFフレームサイズ)を適宜変更しています。
それ以外の画質やAF性能に関する部分は、プレーンな状態ですので、「とりあえず構えて撮ってみた」状態となっています。
使用レンズ
今回はタムロンの高倍率ズームをつけました。
タムロン 14−150mm F3.5-5.8 DiIII C001
他の多くのレビューではE-M1 MarkIIと同時期に発売されたた純正の14-100mm F4.0や300mm F4.0が使われています。
もちろん、高いカメラには高いレンズを合わせてそのポテンシャルを発揮すべきなのでしょうが、それでは他のフォーマットと一緒で金額で画質が決まってしまうようで悔しいので(要は貧乏性)、43RacePhotosではサードパーティ製マイクロフォーサーズレンズの、しかも便利ズームに類するレンズでもAF性能は良くなるかをテストします。
まぁ、単にマイクロフォーサーズレンズで望遠がこれしか所有していなかったりというのもありますが。
テスト結果
撮影した結果をご覧いただく前に、ひとこと。
S-AFでのAF性能をチェック
時期は昨年末のある日の夕方15〜16時。風が強くて寒かったですが快晴でした。
この日、もてぎのスポーツ走行枠で走っていたのは、フェラーリF430、ポルシェ911などのいわゆるスーパーカーの類、他にS耐のフィットやワンメイクレースのマーチやロードスター、シビックなどのハコ車が中心でした。
そこでシャッタースピード1/125sからスタート。AFフレームは9点グループターゲットに設定しています。
まずはこのロードスター。S字2個目の立ち上がりを狙ってカメラを水平に構えてほぼ真横に振る単純な流し撮りです。
被写体にちゃんとピントが来ているようですね。
ピントが合っている付近を等倍で切り出してみました(この画像はリンクありません)。
う〜む、ブレている(汗)。
AFフレームは画面中央において撮影しました。カーナンバー(22)あたりがピントの芯でしょうか。
ピントの芯から離れているノーズ付近はS字旋回中のために被写体ブレになっていますが、左フロントホイルなどを見るとそれほどブレは目立ちません。
デフォルトでは、手ぶれ補正はIS-AUTOに設定されていますが、適切に機能しているということでしょう。
等倍で見た場合に全体として解像感に乏しく感じられますが、ほとんどは被写体ブレなので私の腕の問題(汗)。
今度は黄色いロードスター。同じ場所でカメラを反時計回り30°ほど傾けて構えての流し撮りとなります。
こちらも等倍でみてみましょう(この画像はリンクありません)。
ピントは左フロントポジションランプ付近でしょう。バンバーと車体との合わせ目や表面のわずかな凸凹が捉えられているので、ピントは合ってますね。被写体ブレのせいで解像していない…。
こちらはVITAというシングルシーターのレースマシン。鈴鹿でFJなど作っているウエストというコンストラクターが作った入門用レースマシンで、今は鈴鹿ともてぎでワンメイクシリーズがあります。
速度レンジはロードスターよりちょっと速いくらい(この画像はリンクありません)。
スイマセン。やっぱりマシンの動きを上手くトレースするようにはレンズが振れていないですね…(汗)
ドライバーのヘルメットのカラーリングやアライのマーク、リアウイングステーの肉抜き穴などが明瞭に見えるので、こちらもピントは合ってますね。
S-AFについて
夕方の撮影ということで画面全体として暗めのシーンでしたが、ISO-AUTOがデフォルト設定ということもあり、初代E-M1と同等以上のAFスピードが実感できました。
マイクロフォーサーズレンズを付けた場合のE-M1 MarkIIのS-AFは、コントラストAFを使用するわけですが、暗めのシーンでも迷うことなくピントを合わせてくれました。
初代では同じ程度の暗さで迷うことがあったので、MarkIIになってセンサー類に最新デバイスを適用したことがコントラストAFに関しても効果があったということでしょう。
タムロン 14−150mm F3.5-5.8 DiIII C001は、いわゆる便利ズーム。「そこそこのレンズ」なわけですから、これがオリンパスのPROレンズだったなら、さぞかしスピード感が実感できるでしょうね。
C-AFの場合をチェック
S耐久のST−5クラスのフィット。S耐車両なので、フィットといえども速いですね。先ほど同様の場所から撮影。
S字のクリッピングポイントを過ぎたあたりからAFを開始して、真横に来る前にシャッターを切っています。
マシンはやっぱりブレているのですが、背景の路面のホワイトラインのブレがほぼないことから推測するに、ひょっとしたら流し撮り方向のIS-AUTOが誤作動しているかもしれません。
マシンのリアフェンダー前を等倍で切り出しました(この画像はリンクありません)。
リアドア下部の「NATURAL POWER」のロゴはスタンプを模したデザインですが、スタンプ特有のカスレ表現が確認できることからピントがあっているのがわかります。
白いVITAを今度はシャッタースピードを落として1/50sで(この画像はリンクありません)。こうなったらもうブレとか気にしない(←アカンやろ)。
ブレはさけられないけれど、スポンサーロゴやドライバーの顔などを見ると、同じ撮り方ならここまでAFが追従できているのがわかりますね。
ところが、シャッターポイントをクリップ付近に移して撮影すると、とたんにピントがあわなってきました。
等倍切り出しでみるとこんな感じ(この画像はリンクありません)。
1/160sまでシャッタースピードをあげてもどこにもピントが合わない。
S字1個目を立ち上がってきたところからAFが合焦して、ファインダー上では追従しているように表示されましたが、減速→方向転換→加速をしながら画面奥から手前に移動する難しいシチュエーションで、加速度の変化に追従しきれていないようです。
1/250sまであげてもこの傾向は同じ様子。
手前のサンドトラップの砂利が解像していて、ピントが手前に来ているようです。
(上の画像はリンクありません)
路面アウト側にタイヤカスがみえていることを考えると、手振れ補正が悪さをしている可能性も考えられますが、まあ、等倍でみればやっぱりピントがはずれているとしか言えないですね。
C-AF+TRの場合をチェック
この後C-AF+TRにしても、コーナーでの加減速を含むシチュエーションで同じようにピントが追従しきれないので一旦あきらめ、シャッタースピードを1/500sまであげて連写をチェックしてみました。雑誌とかでよくやるヤツですね。
先に、連写の最初と最後を一枚ずつ貼っておきます。
S字2個目にアプローチする手前からフェラーリに合焦して、立ち上がりまで追尾させています。
この間を連写Lモードで撮影しました。
上の2枚を含む16枚について、本来の解像度5184x3888ピクセル(TIFF形式で現像)からマシンの写っている1280x960ピクセル分を切り出して4x4枚に並べて連続写真を作りました。3000x4000ピクセル(JPEG形式)に縮小したものをご覧ください。
写真は時系列に、左列から右列、上段から下段へすすんでいます。
先を走るフィットが画面を横切るわけですが、しっかりフェラーリを追尾してくれています。クリッピングポイントへのアプローチから立ち上がりまで、全ショットノーズにピントがあった撮影となりました。
ということは、やっぱりさっきのスローシャッター撮影は上手く被写体をトレースできなかっただけなのかも…。
ちなみにこの連写、使用しているメディアは普通のSDHC(SunDisk Extreme Pro UHS-I Class10 )ですが、十分な本体バッファがあるおかげですぐに次の撮影ができました。
C-AFについて
C-AFはスローシャッターではピント追従がイマイチのようです。実は、途中でAF感度設定をいじったりしながらいいところを探ったんですが、今回の撮影中は上手くいかずデフォルトに戻しました。
一方で、シャッタースピード1/500sでの追従+連写Lは全ショットピントがあっていたので、ひょっとしたらレリーズ中にAF動作ができていないか、スムーズに動作していないようです。
E-M1 MarkIIのC-AFは像面位相差センサーをたよりに動作していますが、これがサードパーティ製マイクロフォーサーズレンズとの相性がよくないかもしれませんね。
ただし、まだデフォルト設定から多くは変えていないので、チューニングの余地はあるかと思います。
まとめ E-M1 MarkIIとサードパーティ製レンズのAFについて
今回は、E-M1 MarkIIにサードパーティ製マイクロフォーサーズレンズを組み合わせた場合のAF性能について検証しました。
S−AFでは、E-M1系以外のカメラでも採用されているコントラスト検出方式なのもあってか、タムロンのレンズでも問題なく使えるばかりか、スピードと精度の面で初代E-M1と同等以上を体感できました。
C-AFは、比較的高速シャッターの範囲では精度よく被写体に追従し、初代E-M1を含む歴代のミラーレスカメラとは別格のスピードと食いつきのよさを実感できました。
一方でスローシャッターでは、レリーズ中のAF動作がタムロンのレンズでは上手く機能しなかったようですが、デフォルト設定での結果であり、次回以降にAF設定を詰めて再度確認したいと思います。
今回の結果を受けて、オリンパス純正レンズでもミドル/ローレンジのレンズ、たとえば、望遠ならM.ZUIKO DIGITAL ED 75−300mm F4.8-6.7あたりだとどういう挙動をするのか興味が湧きますね。これは PROレンズもふくめ、別の機会で検証したいと思います。
次回は、フォーサーズレンズとE-M1 MarkIIの組み合わせでテストした結果を紹介します。