今回はレッドブルエアレース2018の続きです。前回は土曜日のフリープラクティスと予選の様子を、オリンパスの最新機材(E-M1markIIとM.ZD ED 300mmF4.0 IS PRO)で紹介しました。
新しいファームウェアとなったE-M1IIのC-AFとサンヨンの高画質が相乗効果となって気持ちよく撮影できました。では、最新機種・超望遠レンズでないとエアレースは撮れないのか?というとそんなことはありません。今回はもう一つ機材を用意して、「そんなに大きな望遠レンズはないけれど、そこそこのレンズでいい感じにエアレースを撮りたい」という場合にどんな写真が撮れるか?をやってみましたのでご覧ください。
Topics
機材について
Olympus OM-D E-M1 + Zuiko Digital ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD
大げさに前振りしておきながら、markIIとサンヨンを導入する前にメインにしていたカメラとレンズなだけですね(汗)無印E-M1のファームウェアは4.3でレンズは1.1。
土曜日から撮影する機会ができたので、markIIとサンヨンのバックアップが主な目的ですが、超望遠をサンヨンが担ってくれるおかげでZD50−200mmはテレコンなしの比較的広角側の撮影にチャレンジできることになりました。
ZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDはフォーサーズ時代はZD 12−60mm F2.8−4.0 SWD、ZD ED 50mm F2.0 macroと合わせてHGレンズの定番とされる高画質で、超音波モーター仕様なのでAFも速く、フォーサーズ/マイクロフォーサーズでモータースポーツ撮影をする際のメインレンズとして活躍してくれています。にもかかわらず中古価格はかなりお手頃で新品もわずかですがまだ手に入る模様。
このレンズ、望遠側はF3.5と比較的明るいものの、テレコンで1.4倍や2倍にして使うことが多かったのでF5.6とかF7とかでしか使ってなかったんですよね。買った最初の頃はテレコンを持っていなかったので、E-3でAF爆速!と悦にいったものですが、今回久しぶりにテレコンなしで素の良さを味わってみようと思います。
今回は、前回紹介した300mmF4.0(+テレコン)の420mmの焦点距離と、ZD50-200mmの50〜200mmの焦点距離を比べながらみていきましょう。
撮影ロケーション
場所は前回紹介したポイントと変わりません。当日のカメラマンエリアの混雑具合はあたらめてご紹介する予定ですが、身動きが取れない場合には、やはり高画質・高速AFのズームレンズはやはり便利ですよね。
日曜日決勝の様子をそこそこの望遠で
ZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDでの写真を中心に、一部E-M1markII+M.ZD ED 300mm F4.0 IS PROの写真もはさんで紹介していきます。
昨年の千葉戦でポディウムに立った、室屋義秀、マルティン・ソンカ、ペトル・コプシュタインの3機によるパレード・フライト。昨年のようなスペシャル・サイドアクトが用意されていなかったので、こういう特別なイベントが用意されると嬉しいですね。エアレース機が3機これほど接近して編隊飛行するのは日本では初めてだったかもしれません。
パレードフライトはトラック上を2,3往復してくれたので、ワイ端とテレ端のそれぞれで1枚ずつ撮れました。スローシャッター気味だったのでどちらも手ブレが出てしまってますね。2枚目のションカ機の機首に流し撮りの芯がきていますが、そこのピント具合をみるとフォーカスは出ているのがわかると思います。
室屋機はこの時点で予選で使用した「スモール・テイル」をやめてスタンダードな尾翼に戻しています。これがあんな結果になってしまうとはこのときは知る由もなかったです…。
同じくパレード・フライトのコプシュタイン機を300mmF4.0で撮影。編隊飛行のあとに各機が個別にデモンストレーションをしてくれたときの1枚です。昨年から主翼にイラストが入ったデザインになっていて、昨年も似たようなアングルで(ZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD + EC-20 使用)撮影したものがありますが、それと比べるとイラストの細かいところまで解像しているのがわかります。
レッドブルエアレース黎明期の名パイロットにして現ヘッドジャッジ(審判長)のスティーブ・ジョーンズ氏によるキャリブレーション・フライト(計測機器の校正を目的としたテスト飛行)。TVやRedBullの動画配信でオンボードカメラによるトラック紹介がされますが、このスティーブ・ジョーンズ氏とポール・ボノム氏が持ち回りでフライト、解説していますね。
機体はチャレンジャークラスのExtra 330LXですが、今季からチャレンジャークラスはZivko Edge 540V2にアップグレードされたので売却等されずにキャリブレーション用に残されているということでしょうか。今年も残念ながらチャレンジャークラスの開催はなし。
撮影は300mmF4.0で、1周目のスモークが消えずに残っていた奥を飛んでいるので若干霞んでしまってます。とはいえ、キャノピー内が見える程度にはしっかり解像しています。
ここからはRound of 14から数枚。まずは、クリスチャン・ボルトン選手。300mmF4.0で撮影。エアレース機のプロペラ回転数では、1/160s程度でプロペラは1周する様子が撮影できます。
ボルトン選手はHEAT1でピート・マクロード選手とマッチアップしましたが敗退。
マルティン・ソンカ選手はHEAT3でファン・ベラルデ選手とマッチアップして勝利。Final4まで勝ち進み、結果3位表彰台を獲得しました。
ZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDを使った撮影です。ズーム位置が中途半端だったので焦点距離101mmとなっていますが、だいたい中間位置という程度に理解ください。画面中央が第7ゲートで、ここを通過して大きく右方向に旋回するハイGターンとなっていて、1枚目第7ゲート通過、2枚目ターン後半です。
幕張の海上を飛ぶエアレース機を150mm以下の焦点距離で撮影しようとすると、引きの構図となって機体は小さくしか写らないし背景は空(しかも曇天か晴れていても逆光を補正するために白くなり気味)となるのでエアゲートも入れたいところ。ここにスピード感を与えたいとなると航空機撮影ではあまり使わない程度までスローシャッターにして挑戦となります。構図上のポイントとなるエアゲートを画面中央に意識しつつ、ゲート進入からターン終了までの機体の動きに合わせてレンズを振っています。この間、中央のエアゲートに対する機体の配置は変化しますが、C-AF+TRで追従してくれるので、気に入った構図の前後で連写Lでシャッターを切ればOK。最初から最後まで連写し続けるのはダメです。EVFの表示が遅れてしまって機体を追いかけられない、構図が維持できなくなってしまいます。
ミカエル・ブラジョー選手は、HEAT5でペトル・コプシュタイン選手を僅差で下しRound of 8に進出。
この写真はスタート直前のもので、スモークをたどるとゲートより後ろを飛んでいるのがわかりますが、雰囲気としてゲートを配置してみました。パッと見ではゲートをくぐった直後に見えるように、さらにスローシャッターにしています。飛行機で1/30sはかなり珍しんじゃないでしょうか?ちなみにスタート後の様子も撮るために手ぶれ補正はOFFにしていますが、単純な水平方向にカメラを振る流し撮りでかつ十分スローシャッターを切る場合はS-IS AUTO(補正方向自動検出)か、S-IS2(縦ブレのみ補正)にして撮影した方がより成功率が上がるでしょうね。
マティアス・ドルダラー選手はRound of 8でマイケル・グーリアン選手に敗れて最終的には8位。この週末は体調不良に悩まされたそうで、機体のコントロールに苦しんだようです。
写真はゲート8を通過する瞬間の一枚ですが、主翼がロール方向に大きくブレていて、ゲート直前にも関わらず機体を水平に戻し切れていない様子(インコレクトレベルで+2秒ペナルティ)が撮影できました。カメラマンエリアの一番奥からはゲート8が最も近いゲートで、マイクロフォーサーズなら焦点距離300mm以上でこれくらいの画角の撮影ができます(この写真はさらに少しだけトリミングしています)。
ゴール直後のマイケル・グーリアン選手。このあとFinal4まで残って準優勝でしたね。
ゴールゲートはチェッカーパターンなので背景のオブジェクトとしては少しゴチャゴチャしています。グーリアン機はホワイトが基調のシンプルなカラーリングなので邪魔し合わないと思っていました。もう少しシャッタースピードを落としてゴールゲートをブラしてゴチャゴチャを整理してもよかったかも。
再びミカエル・ブラジョー選手。一番近い第8ゲートで思い切って斜めにカメラを構えて1周目(第6ゲート)の出てくる瞬間と2周目の進入直前を撮影しました。1枚目をみると先ほどのドルダラー選手がインコレクトレベルだったのに対してわずかしかロール角度って違わないので、かなりシビアなところを攻めていることが予想されます。
420mm(さらに少しトリミングしている)であれば1/250sの比較的ブレが少なくて取りやすいシャッタースピードでもエアゲートが流れてくれるのでスピード感が出ています。プロペラの回転する様子もほぼ最適かなと思います。メタリックの機体も渋くてゲートの赤とよいコントラストです。
バーティカル・ターンの最高点からゲート4に向かって急降下するマルティン・ソンカ選手。Round of 8ではブラジョー選手とマッチアップして勝利、Final4ではインコレクトレベルをやってしまいましたが、3位表彰台でした。
Round of 8の時点で16:00を過ぎて日が傾いてきた状況でスモークもオレンジ色っぽくなってきました。雰囲気重視でホワイトバランスはいじらずにしています(カメラ設定は「晴天」、RAW現像時もそのまま)。
バーティカル・ターンはカメラマンエリアからは一番遠く、420mmでも引きの構図になってしまいますが、夕日でスモークが見えやすくなって画面を構成する要素として使えるようになります。直前の海上のスモークの影響で少し霞んでしまいますが、ピントが合えばそれなりに画になりますね。
再びZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDに持ち直してファン・ベラルデ選手を撮影。前戦カンヌ大会に続くRound of 8進出でしたが、さすがにマット・ホール選手が相手では分が悪かったですね。
写真はスタート前、スモークオンした直後くらいです。西日の影響を受けにくい角度で背景は空と海と房総半島が水墨画のよう。スローシャッターで流し、そこにレプソルカラーの機体を配置して印象付けています。
Final4のピート・マクロード選手。インコレクトレベルをやってしまい4位になってしまいましたが、これでポイントゲット。
1周目のシケイン通過後のゲート7へのアプローチ中を100mmで、ゴール直後を200mmで撮影しています。時刻も16:45頃となって夕焼け空、昨年までのタイムスケジュールではこの時刻には飛んでいなかったので、まさにマジック・アワー。逆光かつ黒い機体なのでディテールよりもシルエットが残ることを重視、水面のきらめきも白飛びしない範囲で露出補正して撮影しましたが、やはり、撮影ポイントが後ろだったためにどうしても前の観客の頭が写り込んでしまいます。さらに引いて50mmにして1/20sのスローシャッターで観客も流してしまおうとチャレンジもしたのですが、どうにも中途半端でした。
最後にウィナーのマット・ホール選手をスローシャッターで。
エアレースは普段見ることのないくらいの海上から低い位置を飛んでいるので、構図も水平線を高い位置に持っていきたいのですが、そのためにはやっぱり波打ち際に場所取りができないと難しいですね。この写真もすぐ下は前の観客の頭やレンズがあってこれがギリギリ。なので、シャッタースピードでどれくらい水面を流すか?スモークは目立つ程度の露出か?などを考えた上で機体を配置するような構図づくりになりますね。
超望遠でなくてもエアレースは撮れます
今回は超望遠域(〜420mm)に対して比較的焦点距離の短いZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDで撮影したレッドブルエアレースの写真をご覧いただきました。いかがだったでしょうか?
焦点距離の短い、引きの画でエアレースを撮る場合のポイントをまとめてみると、
- 海上のエアレースで使える画面を構成する要素は空、エアゲート、水面
- 空は天候や時間による色の変化をホワイトバランス、露出補正を色々変えて演出してみる。機体の黒つぶれ、空の白とびをそれぞれどの程度にするか基準をもって判断する。
- エアゲートは機体に最も近い要素なので、エアゲートのブレによる相対速度によってスピード感を演出できる。引きの構図ではシャッタースピードを下げることでスピード感が増す。
- 水面は上記の空とエアゲートの二つの要素をあわせ持つ。天候や時間で変化し、機体との位置関係やブレでスピード感を与えられる。
なのかなと思います。まあ、ブダペストとか海外の大会だと世界遺産の前だとか橋の下くぐったりだとかで背景含めて絵になりますし、海の上でもカンヌとかサンディエゴは海も空も綺麗ですから、それに比べると幕張はちょっと見劣りするなかで、あれこれ工夫がいりますね。逆に画面を構成する要素が少ないので、初心者むきなのかもしれませんね。
次にZuiko Digital ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDですが、やっぱりいいレンズですね。E-M1/M1markIIとのAFや重量バランスなどの相性もよく、写りはマイクロフォーサーズPROレンズに遜色ありません。これまでモタスポ撮影にテレコン(特にEC-20)付けて撮影するばっかりだったので久しぶりに素の状態で使いましたが、テレコンで使い続けた後に素の状態で撮るとやっぱりテレコンは多少の画質悪化があるんだと理解できました(汗)。AFも素の方が速くて精度もいいし。
PROレンズだとM.ZD ED 40-150mm F2.8 PROがMC-14とセットで15万円程度ですが、ZD ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDとテレコンEC-14、フォーサースアダプタMMF-3の中古美品をカメラ屋さんやオークションで探せば半額程度で揃うのでオススメですよ。