古新聞になってしまいますが、4月3日にツインリンクもてぎで行われたスーパー耐久の開幕戦の撮影レポートをお送りします。2016年モータースポーツ流し撮りシーズンの開幕です。
Topics
スーパー耐久ってどんなレース?
まず、スーパー耐久シリーズとはどんなカテゴリーのレースか?近年の動向とともに確認しましょう。
SuperGTに次ぐ規模のツーリングカーレース、偉大なる草レース
スーパー耐久とは市販車ベースのツーリングカーレースです。同様のツーリングカーレースとしては、おなじみのSuperGTがありますが、SuperGTに比べて車両の改造範囲がせまく、外観はほとんど市販車の状態から変わりません。かつて、FIA(世界自動車連盟)が定めたGr.Nという規定にもとづいてJAF(日本自動車連盟)が制定したN1規定の車両で争うレース「N1耐久」がスーパー耐久の出自ですが、このN1規定というはエンジンの改造(他形式のエンジン乗せ換え、排気量変更など)は一切禁止され、ほとんどの部品が純正または市販品で、レース専用となるのはロールケージなどの安全装備のみというもの。現在の統括団体であるSTO(スーパー耐久機構)の運営になってから改造範囲は多少は緩和されたものの、市販車ベースであることに変わりなく、日本の草レースのトップカテゴリーといってもいいでしょう。
それだけに参戦できる車種も豊富で、今シーズンは排気量別にST-1~5までの5クラスとFIA GT3に準拠した車両によるST-Xの6クラスが設定されていて、あこがれの高級スポーツカーやスーパーカーから街でよくみかけるセダンやコンパクトカーまでエントリーしており、非常にバリエーションが多くて見ていて飽きません。
スーパー耐久の名のとおり、レースフォーマットとしては耐久レースの形式をとっています。おおよそ500㎞またはそれに相当するレース時間(3~5時間)で行われます。現在のF1がスタートして2時間たった時点で規定周回数を終えていなくてもレース終了とする規定を設けていたり、SuperGTでは250~300㎞程度のレース距離であることを考えると長丁場であるといえます。
Rd.1もてぎスーパー耐久
そんなスーパー耐久2016年シーズンはN1耐久としてスタートして25周年にあたります。今季のエントラントは過去最高の65台!このもてぎラウンドについては62台の参戦です。これだけの台数が500km/5時間を走るわけですから見ごたえ十分。さらに今季は、脇阪寿一、荒聖治、片岡龍也、吉本大樹、星野一樹、井口卓人…、などなど、SuperFormula、SuperGTに参戦している/していた有名ドライバーも参戦し、話題作りに事欠かないシーズンインとなりました。
今回エントリーした各クラスの車両を簡単にまとめておきます。
- ST−X:スーパーカー勢揃い。SuperGTでも走っていないマクラーレンが観れる。
NISSAN GT-R NISMO GT3
SLS AMG GT3
BMW Z4 GT3(E89)
McLaren 650S GT3
PORSCHE 911 GT3(997)
AUDI R8 LMS ultra
Ferrari 488GT3、458GT3 - ST-1:数年前までのトップカテゴリー。車両もちょっと古め。
BMW Z4M Coupe(E86)
Porsche911 GT3 Cup - ST-2:かつてラリーでみられた三菱VSスバルの戦いがこんなところに。
MITSUBISHI LANCER EVOLUTION X、 IX
SUBARU IMPRESSA WRX STI(VAB) - ST-3:他のカテゴリーでは見かけない車種が特徴。
NISSAN Fairlady Z(Z34)
LEXUS RC350、IS350
TOYOTA MarkX(GRX133) - ST-4:最もエントラントが多くて厳しいクラスながら、車種的にホンダの独壇場。
HONDA CIVIC TYPE-R(FD2)
CIVC TYPE-R EURO(FN2)
INTEGRA TYPE-R(DC5)
S2000
TOYOTA 86(ZN6)
Vitz GRMN Turbo(NCP131)
SUBARU BRZ - ST-5:街で見かけるコンパクトカーの争いに、近年、ディーゼルデミオ、NDロードスターが参戦。
HONDA Fit3 RS(GK5)
FIt2 RS(GE8)
TOYOTA Viz RS(NCP131、NCP91)
MAZDA ROADSTER(ND)
DEMIO(DE5FS、DJLFS)
DEMIO Diesel Turbo(DJ5FS)
エントラント書き写すだけで疲れる(汗)。ST−XクラスのマクラーレンやIS350、ディーゼルデミオなんかは、他のレースではまず走っていないので興味深いですね。これだけ幅広いクラスのマシンが混走するのでSuperGTでみられるような、バックマーカーのGT300を追い越すGT500がいかにロスなく処理できるか、みたいなよりもさらに難易度が高いはずです。GT3車両のレーススピードで追い越されるFitにしても怖いんでしょうけど。しかし、実際のレースではバックマーカーがらみの接触/クラッシュは少ない印象です。クリーンなバトル、オーバーテイクは見ていても気持ちいですね。日本のレーシングドライバーの成熟度がうかがえます。
このレースはこう撮りたい
長丁場のレースを生かして、じっくり、いろいろ試したい
このように、スーパー耐久の魅力は豊富な車種と台数が長距離を戦うところにありますが、レース写真を撮影する者にとっては2つのメリットとなります。
1つはじっくり、たっぷり撮影できる点。車速がことなる6クラスのマシンはレース開始直後から差が出ますから、ほぼコースのどこかでマシンが走っていることになり、シャッターチャンスが多くなります。また、耐久レースですから、時間をかけてコースのいろんなところから撮影する余裕もあり、新しい撮影ポイントを見つけてチャレンジするには都合がいいです。
2つ目は、スキルにあわせて被写体を選ぶことができる点。いきなりGTRの全開走行に目や手が追いつかない場合は、FitやVitsを撮ってカラダを慣らせばいいのです。6クラスの違いはそのまま速度域の違いにあらわれますから、1回のレース撮影の中に6ステップのレッスンがあると考えると、初心者でも1日で上達できる可能性があるわけで、これほどレース写真撮影するにはありがたいレースは他にないでしょう。
ツインリングもてぎをホームに撮影活動している私にとっても、毎年の流し撮りシーズンインのタイミングに、このスーパー耐久の開幕戦がもてぎで行われるのはとてもいい肩慣らしになっています。冬場はほとんど車撮れないですし。なので、いろんな構図やシャッター速度、撮影ポイントを試します。いろんな車種が撮影できるのも楽しくていいモチベーションになります。
今回の使用機材(E-M1を買った)
今回使用したカメラとレンズは以下の組み合わせです。このブログを開く前の2015年末にE-M1を買いました。E-M1MarkIIの噂も聞こえ出して久しいですが、おかげで現行のE-M1の値段がこなれたので購入しました。これでミラーレス導入前のZuikoDigitalレンズで位相差AFが使えます。このスーパー耐久の場が導入後初のレース撮影となりますので、時間をかけて各種設定をいろいろ試しました。E-M1でのレース撮影セッティングについては、あらためて記事にしますが、今回のスーパー耐久撮影時点では、E-M5よりはやっぱり使えるかな、という程度。もう少し煮詰める必要がありそうでした。
- カメラ:Olympus OMD E-M1+バッテリーグリップHLD−7
- レンズ:Olympus ZuikoDigital 50-200mm f2.8-3.5+テレコンバータTC20,14、Olympus M.ZuikoDigital 9-18mm f4.0-5.6
ロケーション(撮影ポイント)別フォトレビュー
普段は連射などでそれほど多くはシャッターを切るようなことはせず単射で過ごす私ですが、さすがに耐久レースだけあって約1000枚程度シャッターを切りました。そのうちピント、構図などが意図したとおり、あるいは意図以上の出来?になったもので80枚程度が残りました。そのうちの何枚かをご紹介。
ロケーション
レース開始を最終コーナーが見えるスタンドで伺ってから、90度コーナーアウト側に移動して撮影開始。そのあと、ダウンヒルストレートを登ってヘアピン→V字→S字と走行と逆向きに向かい合うかたちで撮影ポイントを移りながらの撮影でした。
ダウンヒルストレート/90度コーナー
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800mm, F.11, 1/125s
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400mm, F11, 1/125s
ダウンヒルストレートから90度コーナーのブレーキングはもてぎで最も減速度の大きい箇所ですからマシンを追いやすいのですが、ブレーキング中の速度変化があるので単調にレンズを振り回してもフレーミングは失敗しがちです。なので、ブレーキングに入る前、アクセルから足を離したであろう瞬間が撮りやすい。場合によっては、バックファイアが写ることも。
ヘアピン
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400mm, F16, 1/60s
もてぎで一番旋回半径の小さいヘアピンコーナーはブレーキング→ターンイン→立ち上がりの順に、1か所でマシンのほぼ全周を撮影できる便利なスポットです。旋回速度は十分低く、フェンスからも近いので、寄りで撮影したいところ。
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400mm, F13, 1/60s
ターンインで飛び込んでくるマシン。オーバーテイクポイントでもあるので、複数台のマシンが交錯する様子を撮影することもできます。特に、スーパー耐久のように長時間複数マシンが走行する場合は、オーバーテイクのシャッターチャンスも多いです。
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144mm, F22, 1/15s
ヘアピン出口側からは、第2パドックを挟んでV字コーナーを抜けてヘアピンへ向かうマシンを撮影できます。この場合は十分スローシャッターにして柱やフェンスを流してマシンを浮き立たせます。
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400mm, F25, 1/30s
難しくてなかなか撮れないのが、旋回中のマシンと真正面で”お見合い”になっている状態をスローシャッターで撮る構図。このS2000はライトオンしているところが耐久レースっぽくて気に入っています。
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246mm, F14, 1/80s
フロントの”Mclaren”のロゴにピントが合わせられて満足。マクラーレンカッコイイ。
V字
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70mm, F9, 1/30s
S字からV字へ向かう箇所は、イン側に広めのグラベルがあるので、引いてスローシャッターで撮るとマシンのカラーリングが際立ちます。もっと鮮やかなマシンでもよかったかも。
S字
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400mm, F13, 1/80s
S字2個目出口。昨シーズンからディーゼルが参戦していますが、まだ開発の余地はありそう。
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9mm, F5.6, 1/400s
これだけはM.ZD.9-18mmで。
たくさん撮ったのでその2に続きます
1回で済ませようと思ったのですが、結構気に入ったのがたくさん撮れたんで、もう1回スーパー耐久の写真を紹介することにします。