2017年のモータースポーツ撮影は、毎年もてぎのS耐久からはじまります。比較的大きなレースで一番早くシーズンが開幕するのが例年もてぎのS耐久開幕戦ですが、エントラントの数や車種の豊富さ、耐久というレースフォーマットからくる様々なスピードレンジは、流し撮りをはじめるにはいいレース。E-M1MarkIIに更新した最初のレースで、昨年のE-M1と比較しながらレース写真をお届けします。
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このレースはこう撮りたい
2017シーズンの開幕戦は土日それぞれに決勝レース
毎年もてぎのシーズンインはスーパー耐久の開幕戦です。43Racephotosの最初の記事でも2016シーズンの説明をちょっとしています。
開幕戦もてぎのトピックスとしては、国際ツーリングカーシリーズであるTCRとパートナーシップを結ぶのにあわせてTCR規格に準拠したマシンが参加するST−R(第2戦以降はST−TCRと呼称)クラスが新設され、これによるクラス数の増加を受けて参加車両をクラスごとに2つのグループに分けて土曜日、日曜日のそれぞれで決勝レースを行うフォーマット変更がされました。
TCRシリーズは、ヨーロッパではWTCCにつぐツーリングカーカテゴリーとしてすでに人気で、ホンダシビック、アウディS3、VWゴルフなどの街でよく見かける比較的身近な車種をWTCCばりのエアロで変身させたマシンたちが競い合うシリーズです。このもてぎのS耐にはシビックとS3が2台ずつエントリーしました。
今回は、国内初レースとなるTCRマシンのルックスとその活躍ぶり、バリエーション豊富なS耐マシンたちの中のどのあたりに戦力が位置付けられるかを中心に撮影を楽しみました。
今回の使用機材からE-M1MarkII
昨年末に購入したE-M1MarkIIを実際のレース撮影で使用するのは今回からとなります。前回のレビューでは用意できなかったバッテリーグリップも予備のバッテリーと合わせて準備し、初代E-M1(以下、無印E-M1)と比べます。レンズはZD50-200mmにテレコンを合わせています。
- カメラ:Olympus OMD E-M1MarkII+バッテリーグリップHLD−9
- レンズ:Olympus ZuikoDigital 50-200mm f2.8-3.5+テレコンバータTC20,14
E-M1MarkIIで流し撮りするためのAF設定は?
他のミラーレスカメラと比較してオリンパスのOMDシリーズを選ぶ理由の一つは、これまで何度か書いているAF性能の良さです。
前回のレビューでAFの設定について書きましたが、そのときの結果をもとにAF-C+TRを中心に使用し、関連する他の設定を撮影しながら煮詰めていくかんじです。
また、レビューではシビックやマーチといったS耐ではST-5クラスに相当するマシンで低速シャッターが比較的よく決まったのもあった(おそらくはEVFが見やすくなったのではと考えています)ので、実際のレースでもどの程度使えるか試してみます。
ロケーション
今回は土曜日の予選とグループ2(ST-1、ST-2、ST-R、ST-5)の決勝レースのみの観戦。まるでサポートレースかと思うような朝早いタイミングで実施される予選は、未明から降った雨のせいでウェットコンディション。その後もすっきりと晴れるようなことはなく、かといって写真映えしそうな水煙が上がるほどもなくて撮影には難しいコンディションでした。
予選はS字入口をイン側の土手から地下通路を通ってS字2個目出口まで。決勝はS字出口からヘアピン、90°コーナーへ移動しながらの撮影です。
今回は流し撮り9枚
全クラスが走行した予選を中心に9枚をピックアップしてご紹介します。
ST-2のTOWAINTEC インプレッサWRX STI。これがコースに出てきたのが朝の8時過ぎです。今回は妻がが一人で行ってきていいよ、って言ってくれたので早起きして予選から撮影できました。久々の朝一からの撮影。
S字出口から引き気味で130Rを入れながら撮影。1/60sでもなかなかの打率は新しいAFと見やすくなったEVFのおかげかと思います。
E-M1MarkIIでの撮り方としては、AF-C+TRと単射以外に連射Lモードを使用し狙ったタイミングを含む前後2,3枚を撮影する場合を適宜分けて撮影しましたが、連射後半もピンとがあってくれる確率は無印E-M1に比べて上がっています。
土曜日に決勝となるGr.2では、スペック的にはST-1が本命視されていたので、ポルシェかBMWのどちらかということになるのですが…
今回注目していたST−RのTCRシビック。WTCC車両とほとんど同じルックスですが、ボンネット形状なんかはちょっと違う。97(Modulo Racing Project)と98号車(MOTUL DOME RACING PROJECT)の2台エントリーでほぼホンダワークス体制。久々に童夢とホンダのジョイントで、97号車は中野信治選手のFFハコ車挑戦というのも見どころ。
シビックのライバルとなったのはアウディRS3LMS。S3の市販車やそのベースのA3Sedanはコンパクトサイズながらスマートなスタイリングのセダンですが、オーバーフェンダーとリアウイングで武装した姿はスパルタンでカッコいいですね。こういうの見ると市販車も乗ってみたくなります。
こちらはAudi Team Dream Driveのホワイトをベースとしたカラーリング。
もう一台のRS3LMSはバースレーシングプロジェクト(BRP)のもの。ブラック基調にレッドのアクセントはアウディのワークスカラーというか、アウディがRS3LMSを発表したときのカラーリングそのもので、位置づけとしては2台ともアウディジャパンのサポートを受けたセミワークスのようです。シビックとのライバル対決は見ごたえがあります。
ブラックのボディはほんとにカッコいいんですが、アスファルト、タイヤやホイル、グリル、そしてこのボディと、色味や艶の違うブラックを写真に表現するのは難しいですね。
RAWデータを味付なく素のまま見るとE-M1MarkIIのダイナミックレンジにすべて収まっているんですが、コントラスト上げ、ローキー気味に現像しようとすると混ざっちゃう。試行錯誤しながら色味と艶のバランスをみて現像しました。
なんの調整もしていないディスプレイだと全部黒つぶれして見えてしまいそう…。
予選はこの土曜日だけでGr.1もこの枠で走行です。こちらはST-XのARN RACING フェラーリ488 GT3。いわゆるモンツァレッドではなく、深みのあるメタリックレッド。
正面のアングルだとスポンサーデカールがあまりなく、ノーズの跳ね馬のエンブレムと全体のフォルムが協調されたように思ったので高速シャッターで止めて撮影してみました。
この撮影はE-M1MarkIIのC-AFに頼って単射で撮っていますが、止めて撮る場合は、連射Hで枚数勝負するものアリでしょうね。
こちらもGr.1で決勝レースとなるST-4のSKR ENGINEERING S2000。STー4はFD2/FN2シビックにDC5インテグラ、そしてこのAP1のS2000とホンダの独壇場でしたが、86/BRZが入ってきて一番車種の豊富なクラスになりました。
今回はシーズン開幕までに流し撮りの練習をしていなかったのであまりスローシャッターを切っていないのですが、それでもある程度は鑑賞に堪える写真が撮れています。無印E-M1と取っ替え引っ替えで比較撮影していないのでわずかな差に感じるのですが、やっぱりEVFのフレームレート向上が効いているかなと。
ST-XのKONDO RACING GTR NISMO GT3。SuperGTと同じカラーリングなので見慣れてはいるものの、GTRに似合っていてカッコいいですよね。
手振れ補正はS−IS AUTOに設定しているのがほとんどです。このGTRはカメラを斜めに構えて十分に寄って撮影しています。1/125sでカメラを振った方向以外のブレはしっかりキャンセルしてくれているのがわかります。
上のS2000(1/30s)でもフェラーリ(1/500s)でもおなじS-IS AUTOですが、ある程度寄ってカメラをしっかり振っている場合は確実に欲しい手振れ補正を与えてくれます。逆に、カメラを振る角度がわずかな場合はシャッタースピードにかかわらず、マシンの挙動に追従したカメラの動きを手ぶれとして処理してしまい、背景が止まってマシンがブレるという失敗を量産してしまいます。
こちらはST−5のLOVE DRIVE RACNGロードスター。NDロードスターはST-5に4台もエントリーしていますが、このチームは井原慶子監督にドライバー3人も女性という構成(というのを後で知りました)。マツダのレッドにホワイトのパターンが決まっていてカッコいいなと思いながら撮っていました。
こちらも手振れ補正はAUTOで撮影ですがメインの被写体はしっかり捉えることができました。これだけカリッと仕上がると上手くなったかのように感じてしまいます。
E-M1MarkIIの真価はAFだけにあるのではない?
今回の9枚すべてAF-C+TRでの撮影でした。無印E-M1との比較という点では、被写体の追従性がポイントになるかと思いますが、それほど大きな違いを実感できてはいません。
これは、旧フォーサーズレンズを使っていることが大きいのでしょう。ZD50-200mm f2.8-3.5とはいえ、マイクロフォーサーズレンズと比べると大きなレンズ、長い鏡胴ですから、これを駆動するハードウェアのスピードに限界があるのかなと感じます。むしろ、無印E-M1でもモータースポーツ車両を撮るには十分な追従性と言えるでしょう。
そうなると、E-M1MarkIIを使ってみて実感するのはEVFのみやすさ、フレームレート向上によるタイムラグの減少が、被写体を捉えてカメラを振ろうとする撮影者の邪魔しないことが大きなメリットのように感じます。結局はミラーレスより普通の一眼レフの方が流し撮りには向いてるという一般的な話になっちゃうのかもしれませんが。
次回もS耐久の写真を紹介しながら、E-M1MarkIIのレース写真撮影での使い勝手について紹介します。