もてぎで撮影された皆さん、いい写真は撮れたでしょうか?当日は台風の影響が心配されたものの、結局、予選・決勝はドライコンディションで思ったよりもよい撮影条件だったのではないでしょうか?前回までに紹介した傾向と対策が少しはお役に立てたでしょうか?
今回は、撮ってから応募までのワークフローについて、インプレス系のフォトコンで使えるコツを交えて紹介します。昨年はこの考え方で入選できたから、たぶん攻略法!?
Topics
募集要項を確認
あらためて募集要項を確認しましょう。
昨年まではインプレスのアンケートサイト「Que!」を利用した投稿による応募でしたが、今年のモータースポーツ系フォトコンから、写真SNS「GANREF」への投稿となりました。すでに利用されている方も多いかと思います。
応募は最大5枚の写真を締切日10/3までに投稿するだけ。時間は約1か月ありますから、写真のチョイスや現像、編集にしっかり時間をかけて投稿したいものです。
どんな写真で応募すればいいか?
レース当日、思い通りの写真がたくさん撮れた人はもちろん、あまりうまく撮れなかったとお嘆きの人もそれなりに、たくさんの写真からどれで応募するかは悩ましいところです。私は以下の方法、基準で絞り込みを行っています。
審査基準に沿った内容の写真
審査基準に沿った内容の撮影ができていることはどんなフォトコンでも当然のことではあるのですが、WTCCフォトコンは特に写真の上手い下手よりも重視しているようにすら思われると前回分析しました。
具体的な写真の選び方として説明すると、写真の内容を簡単な文章で説明し、それが審査基準に合致しているかで判断するということになります。あるいは、「もし審査員がこの写真をみたら何と評論してくれるか(してほしいか)」が簡単に思い起こされるかどうか、ということになります。
要するに、今回のレースで撮れた1番自慢の写真でも審査基準に沿っていないと選ばれないことがあるということです。その写真の芸術的価値や使っている技能の難しさがありふれたものであっても、その内容が客観的に説明できれば、もっと言えば、こじつけでもいいから審査基準に沿っていることが説明できれば、充分に応募の価値あり、です。
撮影意図が明確な写真
もちろん、構図や編集に凝り難しい状況でスローシャッターが決まった1枚は自己満足度が高いものです。これはこれで審査基準から離れてしまっても、その撮影意図を客観的に(この1枚がどれだけスゴいのか)説明できると思います。つまりは、「玄人好み」の1枚ですね。こういった写真は大賞はとれないものの、例年「Car Watchセレクション」や「デジカメWatchセレクション」と銘打って佳作扱いされることがあります。
私が昨年応募した5枚については、いずれも撮影の状況やどういう意図でシャッターを切ったのか、1年経った今でも覚えていて説明ができます。逆に言うと、それくらい撮影意図が明確であるべきでしょう。
オリジナリティの高い写真
だれか他の人が撮った写真と同じような写真であれば、やはりその写真の価値は下がってしまいます。所詮は1つのサーキットで行われた1つカテゴリーのレース写真ですから、撮影シーンや構図が他者の写真と被ってしまう可能性はかなり高いと言えるでしょう。同じシーンを同じ構図で切り取った2枚の写真があれば、より撮影技術的に優れた写真(例えばスローシャッターとか)が選ばれがちです。ガチンコ勝負できる自信があればよいのですが、結果を重視するなら被りはさけたいところです。
審査基準と撮影意図の有無である程度チョイスが絞られたら、今度は他の応募作品を見てみましょう。
一般的なフォトコンテストと最も異なるのが、締め切り前に他の応募作品を見ることができる仕様です。これによって、その時点での応募者全体のレベルを把握できますし、他の応募作品と被らないように写真を選ぶ余地が生まれます。
昨年は、WECやF1と日程が近かったためにWTCCへ撮影に行く人が少なかったようで、応募数は少なめ、全体レベルを見渡して、自分でもいけそうかなという実感を得て応募にいたりました。また、応募時点で他の応募作品とは構図がことなる作品で応募できました。まぁ、私の場合はフォーサーズフォーマットを縦構図で撮ったものなので、その時点でオリジナリティは高めでしたが。
この段階で、他の応募作品と被りのない、オリジナリティの高い写真が絞り込むことができるはずです。
どのような現像や編集をすべきか?
候補の写真が絞り込まれたら、現像や編集といった仕上げ作業はしっかり行うべきです。仕上げによって、より撮影意図を明確にできますし、色味や構図にオリジナリティを与えることができす。
RAW現像で主題や撮影意図を明確にする
主題となる被写体(この場合はマシン)を背景から目立たせることが現像の目的です。文字通り主題を明るくして目立たせる作業です。レース写真の場合、コントラストがはっきりしたものがよりカッコよく見えますが、jpeg画像に対してPhotoshop等の画像編集を行う場合、暗いところが潰れてしまうことが多いので、初心者であってもRAW現像は積極的に使っていきたいところです。
例えば、このS字を立ち上がるシビック。これは予選(午後)の様子で西日が路面を照らしているのが印象的で、NDフィルタを使って光量を制限して撮っています。わりと路面とグラベルの明暗がありますが、それでも全体的にボヤっとした印象。また、対面するフェンス越しに他の撮影者が写っているのが気になります。
そこで、全体のコントラストを上げてグラベルと対面するスタンドは暗くして隠れてもらうとともに、西日の当たった路面とマシンを浮き立たせることにしました。合わせて彩度を上げてマシンをよりはっきりさせています。あと若干トリミング。これで、「光の道を駆け抜けるシビック」という撮影意図を具現化できました。
ただ、この写真はちょっとやりすぎたかなと反省していまして、タイヤやマシンフロントを黒く潰し気味なところはもう少し改善の余地ありです。
切り取り方で写真の意図は変わる
主題を背景から目立たせるといえば、トリミングはより効果が大きいですね。撮影意図に対して余計なものが画面に入っているなら、そこは取り除くのもいい方法です。
これは、同じくS字でのシビック。この画面だと、後続のラダが中途半端に写っているし、遠景のコーナーポストやフェンスは演出上特に必要ではない情報になっています。
相当乱暴なトリミングですが、背景が整理されるとともに、構図を変化させることまでできました。ただ、これだけトリミングするとさすがにフォーサーズの解像度ではトリミング後の解像度が足りないのであくまでWebで見せるためのトリック。
いつ応募すればいいのか?
「今でしょ!」なんて廃れたキーワードを言うつもりは全くありません(汗)。むしろ「なるべく遅く」です。
前述していますが、このフォトコンは締め切り前に他の応募作品を見ることができるのが特長です。つまりは、ライバル達の動向を確認し、誰とも被らない、オリジナリティの高い作品を応募することが可能なわけですから、このチャンスは生かしたいですよね。さながら、予選終盤に1アタックでポールを奪い取っていくハミルトンか、はたまた往年のシューマッハか。
昨年「サンディスク エクストリーム賞」をいただいた写真は、まさに、ギリギリまで様子をみて、それでも被らない、技術的にもそこそこイケてる写真という自信を持って応募できました。
WTCCフォトコン攻略法の応募編はいかがだったでしょうか?私自身、昨年の応募まではフォトコンテストといえば、作品の出来栄えでガチンコ勝負だと思っていましたが、WTCCフォトコンは受賞作品に特長があり、応募システムも独特なので、このようなコツが見つけやすかったです。今回のフォトコンはもちろん、他のフォトコンにもこういったコツがみつかるかもしれません。みなさんもぜひ、フォトコンにチャレンジしてみてください。