スポーツランドSUGOは、日本の4輪モータースポーツのトップカテゴリー、SuperFormulaとSuperGTが開催されるサーキットとしては最北に位置するサーキット。コンパクトで見所の多いこのサーキットには、関東地方から距離があるために観戦に躊躇する人も多いようで、アクセスや場内を紹介した記事には今でも多くの方に見ていただいています。
去る2019年8月10日にSUGOで実施されたSuperGTの合同テストに行ってきました。アマチュアカメラマン目線でネタを集めてきましたので、2017年にレース観戦したときの情報と合わせて撮影ガイドとしてご紹介します。
Topics
スポーツランドSUGOの概要
スポーツランドSUGOは、宮城県柴田郡村田町菅生にあるヤマハ発動機の関連会社によって運営されてます。SUGOとは地名の菅生のことですね。SFやSuperGTでそうこうしているのは国際自動車連盟(FIA)公認を受けたグレード2の国際レーシングコースです(鈴鹿サーキット、富士スピードウェイがグレード1でF1開催が可能)。このほかに、西コース(カートコース)、マルチショートコース(ポケバイ、モタード用)、国際オフロードコース(モトクロス世界選手権日本GPを開催)を含む4つの専用コースがあります。
アクセスについては、以前に紹介した記事をご覧ください。
SUGOの撮影ポイントを歩いてみよう
さっそく、SUGOの撮影ポイントを紹介していきましょう。今回は、初めてのSUGOを想定したルートを考えて見ました。
SUGO場内マップ
SUGOの場内には、要所要所に案内板が設置されています。道などは結構詳細に表記されているので、このとおりに歩けばまず迷うことはありません。今回はこの案内板をお借りして紹介していきましょう。
インフォメーションゲートからバスに乗ってパドックエリアまで移動
スタートは左上のインフォメーションゲートです。ここでチケットを改札して入場です。入ってすぐの広場は場内を周回するシャトルバスの乗り場になっています。最初のお手洗いもここにあるので済ましておくのもいいでしょう。最初はここからバスに乗って一気にパドックエリアまで行ってしまえばいいかと思います。
バスを使わない場合でも、歩いてグランドスタンドまで行くことができます。距離は大したことはないですが、高低差が大きいので、最初はバスで様子見をおススメします。ちなみにここから最初に見える高低差を乗り越えると、その先は最終コーナーです。最終コーナーから撮影を始めるというルートもアリですね。
バス乗り場には、バスのルートが案内されていますのでチェックしておくといいでしょう。パドック以外に西コース前とSPコーナー脇、裏に停車するので、目的地を決めて移動する場合にもバスが役に立つはずです。
他のサーキットよりもパドックエリアの見通しがよい
パドックでバスを降りると、文字通り目の前にパドックエリアがあります。富士や鈴鹿、もてぎなどに行ったことがある方はわかると思いますが、ほとんどのサーキットでは、レース運営や安全上の配慮からレース関係者と観戦客が交錯しないような導線になっていますが、SUGOに関しては敷地の制約からか、一般客でもパドックの前を通りながら観戦席やイベント会場へ行くことができます。
写真は2017年のSuperGT予選後の様子。画面左奥に車検場があり、予選後車検を終えたNSXとLCがファンサービスを兼ねて展示されていました。ちなみに、写真にも写っているように、パドックと通路を区切るのは黄色のロープとポールのみで、ドライバーやチーム関係者が出てくることも多いので、サインや写真をおねだりするにはSUGOはいい場所かもしれません。
公式テスト日だと、レースの時はパドックパスが必要なエリアも入れます。SUGOのピットボックスは天井が低いのか、上にあがるとかなり近くにピットを出入りするマシンをみることができるのでいいですね。上の写真はいろいろ加工してみました。
パドックエリアを横切って地下からグランドスタンドへ
パドックエリアと通路を仕切るロープに沿ってコントロールタワー脇の地下階段へ向かいます。階段を降りるとホームストレートの下を通る通路になっていて、グランドスタンドへ上がることができます。
グランドスタンド側へ上がりコース側へ振り向くと、ホームストレートとの距離はこれだけ!コースからスタンド最下段までの高さ、フェンスの高さはそれほどなく、鈴鹿や富士を見慣れている人にはちょっと恐怖心すら湧いてきます。もちろん、走行中もここを通ることができるため、超至近距離でストレートを走り抜けるマシンを見ることができます。
一旦スタンド最上階まで上がるとこの見晴らし。他のサーキットとの違いで注意するべきなのは、SUGOのグランドスタンドには雨や日差しを避ける屋根がないこと。そのため雨具は必須です(走行中は傘はやめましょうね)。スタンド席もそれほど新しく、大きくはありません。それでもグランドスタンドはヘアピンまで見晴らせること、ピットがよく見えるという点でレース観戦にはいい場所だと思います。
グランドスタンドの指定席チケットを買った場合、スタンド最上段まで上がったところに設営されている受付テントで指定席券と交換します(2017年SuperGTでの実績)。指定席券は名刺より少し大きいカードで、安全ピン付きのクリップで服の胸ポケットなどに付けるようになっています。
小さなサーキットで観客を画角に入れるか/流すか
グランドスタンドだと広角で観客席やピットを入れた構図や、ごちゃごちゃしがちな背景をスローシャッターで流してしまうような撮り方になると思います。広角から中望遠のズームレンズ(マイクロフォーサーズで12mm〜150mm)があるといろいろ楽しめると思います。
グランドスタンドから1コーナースタンドへ向かう
グランドスタンドを上がって1コーナー方面へ向かいましょう。途中の屋根のあるエリア(ここが唯一屋根がある)は物販や飲食販売のエリアです。ショッピングを楽しみながらさらに歩いていきます。
舗装路が途切れて一旦コース側へ降り、さらに奥に進むと…、
1コーナースタンドへ。ホームストレートのダンロップブリッジから、1コーナー〜2コーナー〜3コーナー〜ヘアピンまで見渡せます。撮影当日はご覧の通りの天気ですが、SUGOといえば「マモノが棲む」でおなじみのサーキット。荒れるレースの場合は必ずと行っていいほどこれくらいの空模様ですね。天気も含めて参考になれば幸いですw
1コーナースタンド上段からパノラマで。画面左側のようにS字を抜けてハイポイントコーナー前のオフィシャルポストまで見えます。
ダンロップブリッジやSUGO看板を正面から撮るならココ
ホームストレートに正対できるは観客席ではここだけなので、おなじみのダンロップブリッジをマシンがくぐり抜けるシーンを撮れます。マイクロフォーサーズなら焦点距離400mmオーバーなら観客席とピットエリアを画角から切ってご覧の構図が、200〜300mmだと正面全体が入る構図になります。
超望遠ならピットの様子も見えるので、撮影だけでなくレース観戦そのものも楽しめるエリアですね。
マイクロフォーサーズ200mm程度なら1コーナー手前のSUGO看板をくぐるマシンが撮れます。画角や構図に注意すればSUGOの文字を収めることができますが、マシンは相対的に小さめに写りますね。
1コーナー〜S字後までが1ヶ所で撮れる
1コーナーのエントリーがマイクロフォーサーズの420mmでこの画角です(数10ピクセル程度トリミングしていますが)。200〜300mm程度あれば十分な画角で撮影できるでしょう。スタンド最上段または最下段(最前列)なら他の観戦客の邪魔をせずにS字を抜けるところまで撮影可能です。
1コーナースタンドからもう少し先に進むと、座席のない平地のスペースがあります。GT合同テストの当日は、2家族ほどがテントを広げて観戦していました。マイクロフォーサーズで焦点距離300mm以上のレンズがあれば、ここからS字を立ち上がってハイポイントへ向かうマシンが撮影できます。
S字を抜けた後は、ガードレールに遮られてマシンの下部1/5〜1/4程度は見えないのですが、反対側のガードレールも入れてマシンを挟み込むような構図が狙えるのでスローシャッターでの流し撮りに挑戦するのがオススメです。
この場所の隣には、かつてのヤマハの開発ライダーでテスト走行中1コーナーでの事故で亡くなった高井幾次郎さんの慰霊碑が置かれていて、今も花やお酒が供えられています。ちなみに、さらに先のハイポイントコーナーが見晴らせる場所にも、事故で亡くなった萩原光さんの慰霊碑が置かれています。彼らの犠牲のよってSUGOが現在のレイアウトになった歴史があることを覚えておきたいですね。
3コーナーへ戻る
パドックエリアまでもどって休憩をとったあとは、少し下りて3コーナーを見てみましょう。
2コーナー出口から3コーナー、ヘアピンまでが見通せる砂利敷のスペースがあり、ここで観戦/撮影するファンも多いです。SUGOのピットロード出口は2コーナー出口に合流するので、レース中も楽しめますね。
砂利敷のエリアとしては広いスペースがありますが、コースが見えるのは最前列までなので、上の写真のように一列に並んでしまっておしまい、という感じです。最近だと小型のテントが並ぶ場合もあり、テントの後ろからならコースを狙うこともできます。
3コーナーを中心にレンズ次第ではヘアピン後まで撮影可
マシンが一番近づくのは3コーナー。ここへアプローチするマシン、旋回中のマシンを撮影するのが撮りやすいでしょう。ここではマイクロフォーサーズ420mmの焦点距離ですが、200mm以上あれば楽しめると思います。
エリアの最前列であれば、広角レンズで引きの構図を撮ることも可能です(最前列でない場合は観客を構図に入れて流すなど工夫が必要)。雨天だとモヤがかかって画面奥の森から手前までグラデーションのかかった絵面になって、SUGOらしい?写真が撮れると思います。画面上の黒いシミのようなポツポツしたものは、レンズに着いた雨滴です。
3コーナーにかけてはマシンのバックショットがメインになります。
焦点距離がマイクロフォーサーズで300mm以上あれば、ヘアピンを抜けてS字に入るまでのマシンを撮影できます(S字手前でガードレールに隠れてしまいます)。上の写真ではモヤのかかった状態ですがテールランプが点いていてウエットっぽく撮れていますが、もっと雨が降ればもう少し引いた構図で水しぶきが跳ね上がる様子も撮影できそうですね。
SPコーナーへ移動
3コーナー付近から先のハイポイント、レインボー、バックストレッチを直接撮影できるポイントはありませんので、SPコーナーへ向かいます。一旦、最初にバスを降りたレストランの前まで戻り、その裏にある階段を降りてSP広場を通ってSPインへ抜けるか、3コーナー脇の道路を下って馬の背側から行くかのいずれかのルートになります。案内看板の見た目にはレストランまで戻る方が距離が短そうですが、こちらは急勾配を階段を降りていくので、体力的には同じくらいだと思います。
パノラマ写真はSPアウトよりから撮影です。鈴鹿のデグナーのような、2個のコーナーを短いストレートで繋げた複合コーナーなので、撮影する場所によって撮れる写真は変わります。また、すり鉢状のスタンドは高低差が大きく、スタンド上段と下段でも変わります。
マシンと正対できる撮影ポイントはココ
上の写真は、SPインのスタンド最下段から、馬の背を抜けてきたマシンを撮影したものです。SPにむけて緩やかな下り坂なので、最下段なら真正面で撮影できます。もちろん、スタンドとコースの間にはフェンスがあるので、フェンスをボカすためにある程度大きなレンズが必要ですが(写真はM.ZD300mmF4.0PRO)、アスファルトの質感や望遠効果などを楽しむことができます。
先ほどの写真と同じ位置からコーナリング中のレクサス。トリミングなしでこれくらいまで寄れます。晴れていればもっと高速シャッターを切れるので、被写体ブレはもっと減らせると思います。
一方、スタンド上段に立てば、コーナーのインを攻めるマシンを中心に撮影することができます。
SPコーナーでの撮影は2017年のSuperGTの撮影記がありますので、こちらもご覧ください。
SPコーナーから馬の背へ
次に、SPコーナーから少し戻って、馬の背へ歩いていきましょう。観戦スタンド脇から舗装路を降りていくと、馬の背とSPをつなぐ短いストレートにもっとも近づくことができます。
バックショットをカッコよく撮るならココ
コースに一番近いところまで降りてSPコーナー側に振り向くと、SPインを旋回するマシンのバックショットを撮ることができます。ここでもフェンスが邪魔になる場合がありますが、レンズをフェンスに張り付くくらいに近づけることができるので望遠レンズであればフェンスを「消す」ことができると思います。今度はマシンの後部に正対できるので、上の写真のようが撮影ができます。うまく狙えば、バックミラー越しにドライバーの顔を撮影することも可能です。
再び馬の背へ向かいましょう。馬の背を撮影するための場所は、バイクトライアルのコースにもなっている岩場です。途中には3コーナーへ抜けるためのカーブがあります。カーブの先には、各チームのトラックが並べられています(SUGOのパドックが他のサーキットより狭く、トランポも最小限の面積にするためにトラックだけが移動するようです)。
SUGOの観戦エリアで一番マシンを近く見ることができるのが馬の背です。しかも、本来はトライアルのコースですから広いのも特徴。ただし、ガードレールとフェンスに遮られていて平地での見晴らしはよくありません。ここでよく見られるのが、トライアルコースの障害物として設置されている岩やコンクリートブロックの上に登って撮影する人です(どなたにもオススメできる方法ではありません)。そこまでしなくても、トライアルのコース自体が少し高くなっていて、脚立を使うよりも広くて安定した足場になるところもありますので、足元に注意していい場所を探せば、超望遠レンズは不要です。
バックストレッチからブレーキングするマシンが撮影できる
バックストレッチを抜けてブレーキングしてくるマシンを横から撮影することができるポイントになります。流し撮りも比較的やりやすいと思います。
マシンのスピードになれれば、スローシャッターにチャレンジするのもやりやすいポイントです。
フルブレーキするマシンを横から撮影できるので、ブレーキローターの赤熱を撮ることも可能でしょう。曇っていれば、GT300ではうっすらと、GT500ならはっきりと写るはず。
SPコーナーから最終コーナーへ
最後に、SPから最終コーナー方面へ向かいましょう。この場合も2通りのルートが選べます。ひとつは西コース(カートコース)の脇からアウト側へ抜けるルート。もうひとつはホームストレート下をくぐってアウト側へ抜けるルートです。
西コースに入れる場合(西コース自体に別の走行があれば入れない)は最終コーナーをイン側から見ることができるそうです(今回は確認できませんでした)。ホームストレート下をくぐる場合は、カフェテリアの前を通ってホームストレート下のトンネルに向かいます。
カフェテリアは中にテーブルが並んだ建物で、食堂ではありませんが、雨宿りなどには便利です。お手洗いやベビールームもあり、赤ちゃん連れなら、SPを中心に観戦することをオススメします。私も初めてSUGOにきた時は6ヶ月ほどの息子をベビーカーに乗せてましたが、オムツ替え等にベビールームが使えて助かりました。
最終コーナーの観戦エリアは、スタンド席などはなく、人が二人通り過ぎることができる程度の幅の道があるだけですが、フェンス一枚のみを介するだけで、コーナーを駆け上がっていくマシンを見ることができます。大きく回り込むコーナーなので、前半と後半で撮影できる構図も変わります。
マシンから出る火花を撮影するならココ
コーナーの大半は、上の写真のようにバンク角があり、加速しながらコーナリングする様子が撮影できます。
バンクを走行するマシンはアウト側にGが掛かり、サスペンションが沈み込むので、路面と擦れ合う部分から火花が出やすいですね。撮影には少し距離があるので、マイクロフォーサーズで300mm以上の焦点距離の望遠レンズが必要ですが、その様子を正面から撮影することができます。
この日はGT500、特にカルソニックGT-RやARTA NSXなどは左フロントのエアロが擦れて派手な火花が出てました。火花が出るマシンはほぼ毎周見ることができるので、初めての撮影でも火花を撮影できる確率が高いところだと思います(私もここまでちゃんとした火花を撮影できたのはここだけ)。
ダンロップブリッジを背景にバックショットも撮れる
最終コーナーの後半部分からは、TV中継の映像でよく見られるホームストレートへ抜けていくマシンのバックショットが撮影できます。
こちらもかなり距離があるので400mm以上でご覧のような構図ですがダンロップブリッジを入れることができます。晴れていれば路面からの陽炎でピント合わせ等が難しいのですが、曇り空や雨天であれば、SUGOらしいドラマチックな写真が撮れるかもしれません。
モータースポーツ撮影にはコンパクトで見所の多いSUGOはオススメ
今回はSUGOを歩きながら、撮影ポイントと作例を紹介しました。作例の大半はM.ZD300mmF4.0でしたが、中にはM.ZD12-200mmF3.5-6.3を使ったものも紹介しました。
SUGOは他のサーキットに比べてコンパクトなサーキットです。コースと観戦エリアが近いので、マイクロフォーサーズで焦点距離150mm以上あれば十分撮影が楽しめます。少し歩くだけで観戦エリアを渡り歩くこともできるので、いろいろな構図にチャレンジできる「映える」サーキットだと思います。
みなさんもぜひ歩き回って素敵な一枚に挑戦してみてください。